アーモンドフィッシュ

侍タイムスリッパーのアーモンドフィッシュのレビュー・感想・評価

侍タイムスリッパー(2023年製作の映画)
4.6
人生で初めて参列した法事、義理の祖母の13回忌を終えて、ほっと一息つこうと兵庫県自慢の塚口サンサン劇場に足を運びました。

私の大切なクソサメフレンズのフジタジュンコさんと佐賀犬さんが絶賛していたので、これは別の意味で期待が高まりました。ポロニア臭がプンプンする映画か、あるいは「野球どアホウ未亡人」のようなカルト的な作品なのか、とわくわくしながら観始めました。

ところが、予想は見事に裏切られました。これが意外と面白い!

ストーリーの基本設定は、幕末の侍が雷に打たれて現代日本にタイムスリップするというもの。正直、この手の話は死ぬほど観てきたので、最初は「またか」と思いました。「テルマエ・ロマエ」みたいな展開かな、とも。普通なら、「JIN-仁-」の南方先生のように、主人公が元いた時代の知識や技術を活かして活躍する…はずなんです。ところが主人公は「斬られ役」になるんです。これは斬新でした。現代に侍の居場所はなく、その活躍の場が廃れゆく時代劇だけというのが、何とも切ない感じ。

映画を観ながら、いくつかの場面が他の作品を思い起こさせました。「燃えよドラゴン」でブルース・リーに認められた若きジャッキー・チェンの見事なスタント。斬られ役の名人、福本清三さん。真剣を使うシーンは勝新太郎の息子、鴈龍さんの悲しい事故を連想させました。特にこの真剣の事故を意識しているからか、ラストシーンは私まで緊張して手に汗を握りました。

印象に残ったのは、「一生懸命頑張れば、誰かが見ていてくれる」というセリフ。心に響きましたね(うろ覚えですが)高坂新左衛門を演じた山口馬木也さんの演技も素晴らしかった。よくある頑固一徹の侍ではなく、意外と柔軟な一面があるのがいい味を出していました。現代に戸惑いながらも、しなやかに適応していく姿に、時代を超えた人間の強さを感じました。それと、山本優子役の沙倉ゆうのさんの存在感も特筆もの。これ、私だけでしょうか?永作博美さんにそっくりで、何度も目を疑ってしまいました。

笑いあり、涙あり。本当に素晴らしい作品でした。特に、師匠の関本さんとの殺陣練習シーンは、まるで吉本新喜劇のようで大爆笑してしまいました。

ただねぇ!贅沢を言わせてもらうと、ラストの対決シーンはね、最初に対決した場所でやってほしかったんです。そこに戻って決着をつけるってのが見たかった!それだけが小さな心残り。でも、それ以外は本当に素晴らしい作品でしたよ。

ぜひ観てみてくださいね!