時代劇愛、映画愛に溢れた非常に真摯で清々しい稀有な作品。
私財を全て投げ打ってこの映画を作り上げた安田監督の心意気に感銘を受ける。
そして純粋な映画愛から単館上映からここまで拡大公開に漕ぎつけた関係者の方々の尽力にも心打たれる。
侍がタイムリープして現代にという散々取り上げられた題材を、笑いあり涙あり緊張感もありという作品に仕上げたのは、一重に練り上げられた脚本と非常に優れた俳優陣の演技力の賜物だろう。
特に主演を演じた山口さんの演技は本当の侍ではないかと思うくらい自然に憑依していた。非常に素晴らしい！
これから行われる各所の大きな映画賞を是非受賞してもらいたい。
刀を振りかざし上段に構える時の侍が纏う殺気のような所作は一朝一夕で出来るものではなかろう。
鳥肌ものであった。
コメディパートもツッコミどころは多少あるものの俳優陣の自然な演技のやり取りで
久しぶりに映画館で思わず声を出して笑ってしまった。
おにぎりを貪る場面や殺陣の師匠との稽古のシーン等々…
またショートケーキを食するシーンでは今の豊かになったとされる日本が先人達の多大な犠牲の上にあると改めて考えさせたり…
終盤の真剣のシーンは正に圧巻である。
椿三十郎をオマージュしただろう映画愛に溢れた素晴らしいシーンであった。
二人の口から漏れる白い息。
正に劇中に現存する侍としての生の証であり緊張感を増す大きな効果があった。
巨額な制作広告費と著名な俳優陣を使ってコメディ映画らしき作品が散見されるが、低予算でも優れた脚本と決して著名でなくても卓越した俳優の演技力で、ここまで面白く仕上げられるという見本のような作品であった。
作中の殺陣師の師匠のセリフ 頑張っていればきっと誰かかが観ていてくれる。
本作の興行的ヒットと重なりグッときた…
