極めて高い純度の満島ひかりが120分間拝めるのでそれだけで大満足。この人の「私が変人として振る舞うの、皆大好きなんだろ？」と謎の確信に満ちたあざとい佇まい、たまらないんだ。
時代とがっぷり四つなエンタメをやろうという志は好印象。ただ基本的に展開を生み出し続けることに専念した脚本と追随する演出なので、物語として面白くても映画的興奮は薄めだった。
『アンナチュラル』の時から薄ら漂っていた、時事ネタを扱う時の危うい手つきがそろそろ気になってくる。弱者に誠実に寄り添う姿勢と、エンタメとしての盛り上がりを重視する姿勢。その両者が掛け合わさると、構造的な問題を喝破するというより過剰にナイーブな姿勢が先鋭化する。吊し上げでしかない結末には「社会問題ってこうやって消費していて良いんだっけ？」と疑問にも思う。清濁合わせ飲む胆力を期待したい。
