旅するランナー

シビル・ウォー アメリカ最後の日の旅するランナーのレビュー・感想・評価

4.6
【戦場カメラマンは戦場で恍惚となる】

分断されたアメリカでの内戦。
大統領が立てこもるホワイトハウス、首都ワシントンD.Cへ向かう戦場カメラマンの目を通して描かれる、戦場の狂気。
「地獄の黙示録」のように、向かう途中で様々なイカれた奴らが現れます。
何をしでかす分からない恐怖感と、カメラマンたちと共に従軍しているような臨場感が凄まじいです。

また、キルステン・ダンスト(マリー・アントワネット)とケイリー・スピーニー(プリシラ)によるベテラン&ルーキーものになっているのも見どころです。
ソフィア・コッポラ作品に出演した二人による、ヒロイン継承感もあります。

さらに、最もイカれた奴とも言える、赤サングラスの兵士。
「どの種類のアメリカ人だ?」というセリフが印象的です。
こいつを演じたジェシー・プレモンスは、キルステン・ダンストのご主人。
もともと、この役には別の俳優がキャスティングされていましたがスケジュール調整がつかず、ダンスト経由でプレモンスに打診して、撮影5日ほど前に出演が決まったとのことです。
こちらの二人は、ドラマ「FARGO/ファーゴ(2015)」の共演で出会い、ジェーン・カンピオン監督作「パワー・オブ・ザ・ドッグ(2021)」でも共演しています。
そういうメンバーが、あのトラウマ必至のシーンを撮影したと思うと、ちょっと面白いです。

さて、カメラマンに同行する記者(ヴァグネル・モウラ)が「戦場は勃起するほど興奮する」と言います。
最後にケイリー・スピーニーが見せる表情も恍惚としています。
実は見ている僕も、気分が上がりました。
戦争映画で観客は興奮する。
そういう意味で、これは「ジョーカー」に次ぐアブナイ映画です。
天国と地獄は紙一重なのかもしれません。