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ドーターズのしおりのレビュー・感想・評価

ドーターズ(2024年製作の映画)
4.6
娘のいる受刑者のためのプログラムでもあり、父親が収監されている娘のためのプログラムでもある、パパとダンス。
それぞれの収監理由や懲役はあまり描写されず、あくまでも親子関係にフォーカスしてダンス前とその後(数年後まで)がフィルミングされている。

刑務所内でファシリテーターを中心にプログラム参加者が自分の思いを語る場面では自分の生い立ちを振り返り、出所したら絶対に戻らない決意を話していて、実際出所後の再収監率は5%ほどらしく
このプログラムが受刑者にもたらす効果の大きさに驚く。

しかし、作中に出てきた娘たちは5歳から高校生までの母子家庭で育っている女の子たち。
刑務所の厳重なセキュリティを通ってドレスアップし父親の世界に足を踏み入れる経験が児童心理にもたらす影響は必ずしもポジティブなものばかりではない感じがした。
特に幼稚園生であどけなかったオーブリーちゃんの3年後の父親への態度は
成長につれていろんなことがわかってきたが故のもので、なんともいえない切なさに胸が打ちひしがれる。
文字通り、塀が隔てる父娘の世界。

待たせる側も待つ側も、それぞれ辛いけれど、収監されているだけの理由があって、何より被害者がいる。
出所を心待ちにする家族は「2度と出てくるな」と思っている被害者家族と同じ世界に住んでいるのだ。
きっとオーブリーちゃんはシンプルに大好きで尊敬していたお父さんの社会における立ち位置を知り始めた。
彼女が身につけ始めた教養が、健やかで健全な未来を切り拓いていってくれますように。
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