ロアー

スオミの話をしようのロアーのレビュー・感想・評価

スオミの話をしよう(2024年製作の映画)
4.0
三谷幸喜の作品って、舞台だと笑いすぎて涙が出るほど面白いのに、映画だとちょっと威力が半減してもったいないなぁ〜と思ってた。だから今回もあまり期待し過ぎず観に行ったけど、自分の好みにズバッとハマったこともあって、すっごく面白かった〜!

三谷幸喜=群像劇というイメージがあるものの、実は物理的に舞台を広げすぎないワンシチュエーションコメディの方が面白いのかも?そういえば、代表作の「笑の大学」も究極のワンシチュだし。

今作もほぼ屋敷の一室だけで物語が進むので、登場人物多めのワンシチュみたいな感じだった。だからこのまま舞台化しても十分いけそうだったけど、この豪華キャストを揃えるための媒体=映画だったのかな?でもいつか、キャストを変えて舞台化される可能性は全然ありそう!

スオミに騙された男たちの初対面の集まりかと思いきや、実はそれぞれがそれなりにお互いを認識していて、だからこその微妙な距離感やくだらないマウントの取り合いが本当に面白かった。このシチュと似てる「キサラギ」も大好きで、ずっと「キサラギ」みたいな映画を探してたから、今回ついに見つけられて嬉しい。

スオミがスオミであるルーツも少しだけほのめかされていて深掘りもできそうだけど、あえて掘ってしんみりするのも野暮な気がする。ここはとにかくスカッ!と爽快な喜劇として楽しむのが正解そう。

最後のシーンを唐突と感じたり蛇足に思う人もいるだろうけど、私は逆にそのラストでストッ!と腑に落ちるものがあった。これはミュージカル好きとしての感覚なのかもしれないけど、あのシーンのおかげでスオミにとっての男たちのスタンスがストッ!と腑に落ちて膝を打つ勢いだった。猛烈に「シカゴ」の「♪ロキシー」を思い出して、そういえば「ヘルシンキ」の歌だし、本当に「シカゴ」を意識したシーンだったりする?(少なくとも「オクラホマ!」意識ではないはず)。

実はスオミの出番ってそんなに多くなくて、あえて主役を位置づけるなら西島秀俊の役どころが主役扱いになるんだろうけど、あの最後のシーンで「このお話の主役は私」って、スオミにぐっと顔を掴まれて、真正面からウインクされたような心境になった。あの瞬間、おさげ髪のかわいそうな女の子の影がさっと消えて、心からスカッ!と爽快な喜劇として楽しめた気がする。

それにしても、長澤まさみがひたすら美人だった〜!失礼ながら「え、長澤まさみって前からこんなに美人だったっけ?」って、何度も思っちゃった。登場するたびに「美人!」って思わず見惚れちゃって、いろんな服装やいろんな雰囲気の長澤まさみを見せられたからこそ、素の美しさに改めて気付かされた気がする。

いろんな服装と言えば、西島秀俊演じる草野がスオミの部屋に入るシーン。アイマスクのアレはただの変態だけど、ドレスの方は5人もいる男たちの中で唯一、草野だけが自分の知っている過去のスオミではなく、別の面のスオミに自ら近づこうとした場面だった気がして、なんだか意味深で良きだった。
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