矢吹

バッド・ルーテナント/刑事とドラッグとキリスト デジタルリマスター版の矢吹のレビュー・感想・評価

3.9
冒頭から
我が子に叔母さんをぶん殴れって教育して、
パトカー運転しながらドラッグやって、被害者をちゃんとエロい目で見て、同僚みんなと野球賭博の話をする。
バッドルーテナント。
この男への同情とか、実はいいやつなのかもなとか、考える暇もなく、根っからのカス人間ポリスであることを最速で丁寧に説明していただける。

カイテルさんの、キービジュアルにもなってる、あの肉体美かつ肉体醜、純粋な筋トレとかじゃない、溜め込んできた悪事と悪意の表出みたいな身体。惚れ惚れしますね。
また、描かれるニューヨークという街自体がね、そこで生きていくためには、そうでもしないと多分、っていう雰囲気もわからんでもない。し、これがまた作品の色として素敵に映える。
目には目を、ドラッグにはドラッグを、
だからと言って、やるべきことと、やりたいだけのことの区別がなさすぎるし、むしろ、やりたいだけのことを、正義を盾にやっていく。
そして、主人公が悪事を働くというか、欲望に塗れるシーンが、軒並み、カッコ良すぎる。
ダメじゃん。こんなにかっこよかったら。
そんなことだらけの、ほぼひたすらに最低なことをするだけの中盤までの展開。
良くわかる、人間の欲は最後自分の足すら食う。っちゅう話。
一応ちゃんと追いかけてはいる物語の軸としての、尼僧の暴行事件。
なぜ、何故許す。べきか。
許したせいで人がまた悪事を働くぞというスタンスと、許すことこそが世界のため等の、
シンプルなぶつかり合いに至る。
そして、今までどこにいたんだ、神。
沈黙。
都合ええすぎ。人間存在の犯す、堕落中の堕落をここまで嫌味なく、見れるのは、すごい有難い。
あの、泣き顔に秘密があると思うんだよね。
造形美たるや。比率とかがなんか、完璧だということなんじゃないのかな。きっと何かしらの黄金比が顔面に宿っていた気がするよ。
マジでカイテルさんの腕っぷしが炸裂してる作品だ。
ニューシネマも久々にちゃんと浴びたかも。
メッツvsドジャーズ。
奇跡の大逆転。
世の中色んなやっちゃいけないことってあるんだけど、
結局、人を1番追い込むのは、野球賭博らしい。
矢吹

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