このレビューはネタバレを含みます
これはつらい。金髪で美人のステラはある意味悪目立ちしてしまうので、ユダヤ人の中でも何かと的になってしまう。ナチスに囚われて酷い拷問を受けて、それで精神が壊れないでいろというのも、強い人なら可能かもしれないけれど…と思えてしまう。ステラはひたすら目を付けられて、同胞を売らなければ両親を速攻アウシュヴィッツで殺すと脅され、恋人も互いに監視役にさせられて、仲間を見逃がしたら恋人がナチスに報告するという、非道な出来事が待っている。
ようは、死ねということだったのだろう。ナチスに拷問されるか、または良くても家族と一緒にアウシュヴィッツに送られるのを選べということ。でも、人は意外にそういう道を選ぶかもしれない。ステラのように、友人を裏切って自分は生き残ろうとする人は魂が壊れるので、人は死を選ぶことも多い気がする。
ステラも非常に苦しんで何度も逃げようとするが、捕まってまた拷問を受けたり、より陰惨な条件を付きつけられたりする。でも生きることを選んで、周囲に死をもたらす。ステラの立場になったら、自分が死ぬことを迷いなく選ぶ人もいるだろうし、散々悩んで死の道を選ぶ人など、人は本当に苦悩すると思う。
ナチスが勝っていたらステラは幸福に生涯を終えたかもしれない。史実としては因果応報に見えてしまうものの、この究極の選択で力強くステラを弾劾できる人も、何か欠落している気がする。わたしは未来が見えない中で、か弱い女性が人生の選択を迫られた過ちは手放しで責めきれない。