意外にも正攻法のサスペンスという感じでみやすかった。『ブルーベルベット』における片耳のように、博士の持っていた鈴を持ち帰ってしまったことで地獄巡りが始まってしまう。一切喋らないタクシーの運転手、城のお嬢、酒屋の女主人に至るまで、ずっと「何か知っている風」で不穏。レコーダーに「既視体験の方」の音声まで記録されている恐怖、寛大な妻が鈴を投げ捨ててもデジャヴュは続く…。ようやっと救われるにはエンドクレジットまで待たねばならぬ!
なぜ「幻視」でなく「既視」なのがずっと気になっていたけど、最後までみて、あぁなるほどと。「わたしは記憶の中にわたしを見た わたしは魂の窓から君を見たー。」カーニバルの喧騒を他所にした噴水の水面に、すれ違う夜行列車の窓枠に、虚像を引き寄せる鏡にファム・ファタールが浮かび上がる。
『陽炎座』の松田優作みたく異世界に翻弄され続ける主人公のはずが、イケメンすぎて行く先々でちゃっかりワンナイトしてるのがウケる。途中デジャヴュ大喜利みたいになるのに少し辟易。