ダニエル・シュミットによる、現在から過去のとある場所へ迷い込んでしまう幻想的でミステリアスな物語。
主人公・クリストファーは、17世紀に存在した革命家・イェナチュと、彼がスイス・グリソン州を独立に導いた当時の場所で遭遇するという幻覚をたびたび見るようになる。
その、不可思議なタイムトリップを、かくも自然に感じさせるのは、撮影のレナート・ベルタによる、徹底的に美しく観せることにこだわったカメラワークによるところが大きい。
ラストシーン、緊張感に満ちた視線のやりとり… 。
ポンペウスの娘・ルクレツィアがクリストファーに導くような… まるで堕天使が囁きかけるような眼差しを向け、それに誘われるように衝撃的な行動をとる。
人間の感情の不条理さと、ダークファンタジーの絶妙バランス。