さよこ

トラップのさよこのレビュー・感想・評価

トラップ(2024年製作の映画)
3.5
【プリントした笑顔が剥がれるとき🫠】
繁忙期が忙しすぎて荒ぶった気持ちのやり場を求めて映画館へ駆け込み鑑賞🔥

🪤全体の感想
前半と後半で全く印象が変わる作品。後半になるにつれて前半の退屈さが面白さに変化していく構成がとても不思議で面白かった。設定自体は多少のツッコミどころはあるものの、もし同じ主人公で続編が制作されたらきっと観に行くと思う。

🪤シリアルキラー
エグいシーンあるかも…とドキドキして行ったけど痛いシーンもエグいシーンもない安心設計だった🙆閉じこもったドアをバンバン叩かれるシーンは、過去に自分が同じような状況になったことを思い出してちょっとトラウマを想起させたけど、それを差し引いても怖さレベルはかなり低め。良かった。

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⚠️この先、ネタバレあります⚠️
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🪤序盤
主人公を応援する要素が見つからなくてむしろ悪いことしてるんだから早く捕まったら良いのにって思ったし、かといって被害者や警察官たちに肩入れするほどの描写もエピソードもなく物語が進んでいくから、正直乗り切れなかった🤦

🪤中盤
コンサート会場出てから一気に面白くなって、えぇぇええ歌姫の行動力と肝の据わり方が凄すぎる!!!てワクワクする展開だった。LIVE配信で監禁場所を特定したり今どきの方法なのも新鮮で良かった。ただ歌姫がなんでそこまで危険を顧みずに被害者を救おうとしたのかがちょっと分からなくて、正義感溢れる性格っていう描写どこかであったっけ…?これまで色んな人を思うがままに操ってきた犯人が、この歌姫だけは思い通りにならなくてむしろ歌姫の行動に振り回されているのが面白かった。これ恋愛だったら相当相性良いぞ。

🪤終盤
主人公が本領発揮してるシーンはとても鮮やかで見ていて楽しかったんだけど、これまでの主人公の手口を知ってるだけに、この期に及んで警察は油断し過ぎじゃない…?と若干の引っ掛かりを覚えた。これだけ出し抜かれてなお"自転車に近づくのを許可する"のは甘いよなぁ。これは自分でも先の展開が読めたぞ?

🪤トラップ…?
コンサート会場全体が警察の仕組んだトラップだった、という触れ込みで観に行ったんだけど、思ってたトラップと違ったかも。犯人をおびき寄せるためのコンサートではなく、犯人がもともとチケットを取っていたコンサートに警察が大規模な張り込みをするというもので、警察側も堂々と怪しい人たちを検挙しまくってるし、どの辺がトラップなんだろう?と思った。むしろコンサート会場にいるスタッフへの警戒心の薄さが気になって、そんな末端のスタッフにまで捜査情報を教えちゃって大丈夫…?スタッフの合言葉はバラけさせたり、スタッフIDと照合するくらいしても良いんじゃない?と思った。

🪤2つの人生
前半の娘と一緒にいるときの挙動不審さが過剰でイマイチな主人公だなぁ…と思いながら観てたんだけど、これは2つの人生が重なっていることからくる"ぎこちなさ"を演出してるものだと思ってなんとなく腹落ちした。娘と一緒にいるときや、娘の同級生の親と話してるときって「まっとうな生き方をしているほうの自分」になりきっているから、本来の能力を発揮できなくて、現にピンで動き回ってるときのほうがあらゆるピンチを切り抜けてとても活き活きしている。まっとうな人間に完全に擬態できるからこそ、2つの自分を行ったり来たりしているシーンはあんな感じになっちゃうんだろうな。

🪤主人公の言葉
主人公が言った「これが終わったら自◯するつもりだったのに」というのは、あのときの彼にとっては本心だったのかもしれないけど、こういうタイプの人は、言葉に重みがなく、その時々で本心がどんどん変わっていくから、その後も同じ"本心"を持ち合わせているとは限らない。奥さんと話してるときだって「妻を◯害後に自◯する」と仄めかしていたけど、その数分後にはどうやって警察官たちを出し抜いてやろうって考えて笑ってるような人だもん。この人の本心は流動的で、ある意味どこにも本心なんてないんだろうなって思った。

🪤欠落してる部分
生まれ持って心に欠落してるところがある場合ってどうしたら良いんだろうね。自分の欲求を満たそうとすると他の人に危害を加えることになるし、人間社会でやっていきたいなら欲求を満たせない人生に折り合いをつけるか、人間と関わらない人生を選んで大人しく山の中にでも引きこもって暮らすかの二択になりそう。こればっかりはどうしようもないもんね。

🪤その他、いろいろ
・娘のコンサートに付き合ってあげてめちゃ良いパパって思ったのに…🙈
・Tシャツの彼はお人好しすぎて心配になったけど、主人公は一瞬でそういう人を見抜く力があるんだろうな。あんなふうにわざわざ「良いヤツだな!」て褒めてくれる人こそ良いヤツだもんね。
・ステージにあがるチャンスを一瞬でモノにするのもなんとなくスタッフのなかから歌姫と同じルーツを持っていそうな外見だったり、裁量を持っていそうな年齢や佇まいの人を探して声をかけていそうだけど、ドンピシャで歌姫の関係者にコンタクトを取れるのはラッキーの一言につきる。ただ、こういうやべーヤツってなんか強運の持ち主が多いよね。そして"俺は選ばれた人間なんだ"という自負が加わり、その特性を増長させるきっかけにもなってしまう。
・バックヤードでコーヒーの砂糖を欲しがった人と、バックステージでステージに上がる前に話をしたいと言ってた彼は同じ人かな。うろ覚えだけど雰囲気が似てる気がする。
・ファーストフード店でのやべー細工は、監視カメラを調べたらで一発で分かりそうだけど難しいのかな。とりあえず屋上で犯人を見逃した人たちはあとでちゃんと怒られて欲しい。
・コンサート中ってこんなに売店とかうろちょろする人多いんだ…みんな付き添いできたのかな。びっくり。
・運転変わるって言われて素直に応じちゃうのはさすがに付き人失格すぎる。せめて同乗して歌姫のケアが優先だろ。
・終盤の奥さんの演技が最高すぎた。
・護送車のなかでの笑顔でようやく作り物ではない素の表情を見れた気がする。やっぱ自◯する気なんてさらさらないじゃん。この瞬間、俺ってば今を生きてる〜!て思ってそうだもんね。
・スタッフクレジットで綴りの1つがどれも欠けててこの映画にぴったりのデザインだった。
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