このレビューはネタバレを含みます
エイリアンの生態を、またいちいちイチから説明し直されるんだったらダルいなぁと思ってたら、胴体だけのアンドロイド先生が、この驚異の生命体についてわかっていることを、若者たちに口頭で全部説明してくれる!一見さんにも優しいリブートエイリアン。
宇宙労働者の生活、宇宙船という閉鎖空間、そこで巻き起こるタイムリミットサスペンス、敵なの?味方なの?暗躍する人造人間、個を蔑ろにする大企業の利益追求、緊張をあおる光の使い方、一作目の要素を律儀に踏襲しているなあと感じました。
まず、主役の女の子が、たいそう可愛らしいです。序盤はずっと怯えながら逃げ回るだけの役回りですから、序盤から中盤にかけてほとんど不安そうな表情をしていたのに、とある機転によってエイリアンの攻撃を退けるところで、ぐっと力の入った凛々しい顔を見せてくれます。この顔がとても美しいのです。
ほか、ふたりの女の子たちも可愛らしいのですが、彼女らは死に要因としてグッチャグチャにヒドイ目に…。みんな表情豊かで、すごくいいですねぇ。フェデ・アルバレス監督とは、つくづくオンナの趣味があう。
『死霊のはらわた』『ドント・ブリーズ』『蜘蛛の巣を払う女』と続けてみてきて、イイなと思うのは、とにかく女性キャラクターに対する気色悪いSっ気を隠す気がないところ。女性を肉体的にヒドイ目に遭わせるシーンになると、映画のテンションが跳ね上がる!オンナの尊厳を踏みにじることにかけては、独特のこだわりをお持ちのようだ。
終盤で女性宇宙飛行士が肌着になるお約束のところも、今回は素晴らしかったです!わかってらっしゃる。リプリーみたく、ちょっと動いたらずり落ちちゃうような布面積小さいパンツじゃなくて、鼠径部まで覆うタイプのお召し物で一安心。未来ってのは、機能美の世界なはずでしょう?
こちらとしても、あんまり肌を覆わないローライズのショーツだと味気ないっていうか、現場仕事の人なのだし機能的なタイプのほうが、こう…グッときます!(うるせえよ。)
さて、ギーガーがデザインしたエイリアンは、おちんちんの宇宙怪獣である。こいつが女性乗組員を襲うってことは、性加害の暗喩であるってのは有名だ。
大家リドスコが、爺になってからシリーズに出しゃばってきた『プロメテウス』『コヴェナント』と続けて、わりとどうしようもないレイプまがいの人体実験が描かれてきたので、本作でも予想はしていたけれど…。
今までのシリーズが描いてきたのは、映画作品としてのメタファーだからよかったのであって、ここまでド直球で「交配」を描かれるのは、ちょっと…。
とある登場人物の秘密というか、ちょっとした設定が観客に明かされた時点で、このキャラクターはちゃんと五体満足で生き残るか、とんでもなく酷い目に遭うかの二択であることは想像がつくのだけど、さすがの嗜虐趣味者なワイも直視しがたいコトになっちゃってて、ドン引き…。
あいつのデザインも、なんかキモいだけで嫌だな。なんか、中途半端に嫌悪感を抱かせるキモさなんすよね。泣きの涙で宇宙の藻屑となったニューボーン君の悲哀を見習ってください!
このままだとリドリー・スコットの支配から逃れられないお行儀のいい原点回帰に収まってしまうところを、どうにかこうにかオリジナリティを出してブレイクスルーしていきたかった製作者の気概は伝わるけど、ちょっと俗っぽすぎます。
黒沢清が言うことには、『エイリアン2』の時点で、ゼノモーフは超常的な恐怖をまとったホラーの怪物から、アクション映画の打ち倒すべき敵になり下がってしまったのだと。
1では、エイリアンを前にした乗組員は、みなあまりの恐怖に声もあげられず立ちすくみ、ゆっくりと開く口から飛び出す第二の口の噛みつきにやられてしまうことで、この異形の怪物に映画的恐怖を付与していた。
なのに、2で戦う女となったシガニー・ウィーバーがこの攻撃を身を翻してかわした瞬間、エイリアンは人類の理解の外側にいる存在ではなくなり、対抗しうる生物に成り果てた。
黒沢さんは、2を優れたハリウッド製アクションだと一応は認めつつも、これを「ホラーの敗北」とまで言って嘆いていた。なるほど、硬派な作家はそういう見方をするのですね。
確かに、あの二作目がうまくいってしまったがために、エイリアンはシューティングゲームの的になったり、プレデターと戦ったりして、今に至るまでホラーキャラクターとしては格を落とし続けてきた。
だからこそ、何か新しい要素を付け加えるのではなく、今度こそコイツのキモカッコイイクールな造形を、最後まで信じぬいてあげてほしかったです。
【※注意喚起】
妊娠されてる女性のかたは、みないほうがいいかもです。俺が嫌な気分になるくらいだから、こういう系のは広報でもちゃんと言っといたほうがいいと思いますよ。