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愛に乱暴のumisodachiのレビュー・感想・評価

愛に乱暴(2024年製作の映画)
3.7


吉田修一原作の小説を森ガキ侑大監督が映画化。

桃子は夫の実家の敷地内の離れに夫婦で暮らしている。母屋には義母がいるがそれほど仲が良いわけではなく、夫ともあまり会話はない。週に数回石鹸づくりの講師をやっているが、その講座も終了することが決まってしまう。そんな中、夫の不倫相手が妊娠していると聞かされた桃子は……。

近所で相次ぐ不審火や、どうやら猫がいなくなっていることなど、平凡な主婦を描いているはずなのに最初からどこかがおかしい。なんでもない/つまらない桃子の言動が醸し出す不穏さと、徐々に顕在化する矛盾の先で、桃子の精神は暴走していく。

とにかく最初から最後まで江口のりこの怪演を目撃し続ける映画。スクリーン上で起こっている現象とはうらはらに、静かに、しかし確かに壊れていく様子は目が離せない緊迫感だ。

この映画には「あ、そうだったのか」と視点を転換する仕掛けがあるのだが、もうちょっと際立たせても良かった気がする。あと、結末に向けてはもうちょっとわかりやすくしてもいいのでは?誰にも必要とされていない、誰にも理解されていない、誰にも注目されていないと自尊心を奪われ続けていた桃子という存在をあれほど克明に描いていったので、桃子が積み上げてきたものや桃子の正しさをちゃんと認めてあげるという要素についても、もっとビビッドに描写してもいい気がした。まあこれは私の好みの問題なんだけれども。

チェーンソーやスイカの使い方は気持ちが良かった。ああいうアイテムを出すならば、あれくらい強烈に出してほしいもんね!そして小泉孝太郎のカスっぷりや風吹ジュンのやたらリアルな「微妙な距離感」が素晴らしい。ジワジワと心を蝕む空気感。











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