パレスチナ人居住地区のマサーフェルヤッタに暮らすバゼルは、イスラエルによって自分の故郷が壊されていく様を撮影し続け、故郷を守るために世界に発信し続けている。
そんな中、イスラエル政府に心を痛めているイスラエル人のユーバールがバゼルを訪ね、共に撮影するうちに友情が芽生えていく。

スクリーンに映し出される生々しい破壊のシーンに思わず身震いする。
毎週1棟ずつ壊されていく誰かの愛する家や学校。
絶望の中に突き落とされる人々。
誰に訴えていいのかもわからない、どうすればこの破壊が止まるかもわからない、そしていつ逮捕されるか殺されるかわからない恐怖。そんな中、バゼルを支えるように行動を共にし、撮影を続けるユーバールの姿に胸を打つ。

いつかなんのしがらみもなく、緑も黄色もなく、バゼルがユーバールの元を訪ねることができますように。
2人の友情を、ただ祈ることしかできなかった。

もちろん今観るべき作品だと思う。
バゼル、ユーバール、あと2人のパレスチナ、イスラエルの監督たちに敬意を。

【目の前で故郷が破壊される痛ましさ】
アカデミー賞長編ドキュメンタリー賞最有力と囁かれている『ノー・アザー・ランド 故郷は他にない』の日本公開日が2025年2月21日(金)に決定した。本作は、イスラエル・パレスチナ問題が日に日に悪化の一途を辿っている中、パレスチナ人とイスラエル人の監督がカメラを持って平和に向け手を取り合った記録である。試写で一足早く観たのでれびゅーしていく。

占領地ヨルダン川西岸のマサファー・ヤッタは危機に瀕していた。イスラエル兵が民家を破壊して更地にしようとしているのである。住民たちが「やめて」と抗議する前で無残にトイレがショベルカーによって粉砕される。廃墟になりつつある状況下でカメラを持つ者たちは手を取り合って惨状を撮り続ける。メディアにてイスラエル人が物申すと「お前はそっち側か」と激しい非難にさらされる。パレスチナ人は折角法律の勉強を学んだにもかかわらず、イスラエルの建築現場で低賃金肉体労働をせざる得ない状況に追い込まれる。映画は人が撃たれるところも余すことなく収めていく。実銃ではなくカメラという銃で平和を訴えかけているのである。『ルート181』から大分時間が経ったはずだが、世の中はさらなる悪化辿っている様に胸を痛めた。

• #試写

パレスチナ人住居の破壊が繰り返される西岸地区。銃を構えたイスラエル兵に迫って、毎日、何度でもカメラを向けて問いただす監督。壊されていく故郷で必死に生き延びようとする人々。彼らに共鳴してレジスタンスに加わるイスラエル人ジャーナリスト。

会話にならない、一方的な抑圧と暴力を前に、彼らの姿は果てしなく強い。

できるだけ多くの人に見てほしい映画。