ジョゼ・ジョヴァンニ監督作品。アラン・ドロンがジャン・ギャバンと最後に共演した作品でもある。
ジョゼ・ジョヴァンニは、第二次世界大戦中ゲシュタポ狩りなどナチズムに加担する政治活動を行って、1945年に逮捕、のちに死刑判決を受ける。しかし大統領から恩赦を受けて釈放。出所後は、自身の獄中生活を基にした小説『穴』を発表。それがジャック・ベッケルの目に留まり、映画化。この映画は大ヒットし、ジョバンニは映画業界でキャリアを歩むことにもなるのであった。
そういった経歴を知ると、本作の物語は極めてジョヴァンニの人生と切り離せないし、死刑制度反対という政治的な訴えも切迫したものである。
銀行強盗で収監されていたジーノは、保護司であるジェルマンの助けを借りて仮出所ができる。だがかつての仲間は再び犯罪へと誘ってくるし、それを断り、真面目に生きようとも運命に翻弄され、過ちは決して消えない。ジーノにはジェルマンのように救いの手を差し伸べてくれる人がいようとも、不幸者はさらに不幸を呼び、取り返しがつかなくなる様は世の摂理だと思いつつ残酷だ。
このように現実の写実性もさることながら、ショットも凄い。やはり傑作といえるものは停止させて1コマでみても美しいのだと本作をみてより思った。さらにラストシーンの「早さ」は今みても決して色褪せないし、むしろ今こそみるべき作品なのかもしれない。