恒例のシリーズ時系列
1995年 3.8 Bad Boys Michael Bay映画監督デビュー作
2003年 4.0 Bad Boys II 日本は暴力シーンを削除された短縮版
2020年 4.2 Bad Boys for Life 前作、シリーズ最大のヒット
2024年 4.2 Bad Boys: Ride or Die 本作
2026年? Bad Boys: X 製作開始まで暫し待たれよ。
【Academy Award for Best Actor Will Smith is Back!】MOVIX京都で鑑賞。
オリジナルはRobert De Niro主演「ミッドナイト・ラン」George Galloの脚本、破天荒な刑事と家族を大事にするバディを「ダイハード2」Doug Richardson がリライト。Michael Bayは映画では駆け出し、Don SimpsonとJerry Bruckheimerの世界最強コンビにシナリオを見せると「誰だお前は、こんな本ではB級映画にも足らない駄作だ!」鬼の形相で原稿を机に叩き落とされ、ソノ反骨精神が後に彼を支える事に為る。
当時はMartin Lawrenceが格上、コメディ主戦場の彼は、アクション映画に身震いして断るが、Bayは「私が貴方をタフガイにする」説得したが最後まで疑心暗鬼。安定した演技力と「しゃしゃり出る」間合いの良さは、後の刑事モノに大きな影響を与えた。同じくコメディ色の強いWill Smithはクールなヒーローが似合うスタイルを確立。
前作がシリーズ最大のヒット、気を良くしたソニーピクチャーズはCOVID収束を睨んで直ちに制作、の筈だった。しかし、2022年アカデミー授賞式で、司会者Chris Rockが妻のJada Pinkett Smithの頭に関するジョークに、Smithはステージ上で平手打ち、世界中に生中継。世論の反感は収まらず、アカデミー行事への出席を10年間禁じられた。
彼女の脱毛症は誰でも知ってる、アカデミーでジョークで済ますには品性を欠く。主演男優賞のレビュー済「ドリームプラン」レビューでも触れたが全ての暴力は犯罪で断じて許され無いが、私は授賞式を見てSmithに対しては同情的。過去には戻れないが、ソレでもハリウッドの仲間は彼を見棄てない。一時は公開が危ぶまれた「自由への道」イコライザーのAntoine Fuqua監督は臆する事無く公開。ソニーも凍結を協議したが、彼の貢献を最大限に考慮、復帰後初のハリウッド作品は、北米初登場一位でファン離れも最小限に抑える好スタート。「アイ・アム・レジェンド」続編も大いに楽しみだ。
「Supervision Prison」監督業のスラングで自信満々でデビューしたにも関わらず興業的に大コケすると、二度とハリウッドからオファーは来ない鉄の法則が有る。一作目は制作費もカツカツで空港爆破シーンで、ドル札が乱れ飛ぶ撮影をしたいが、予算不足で監督の小切手を切って本物の紙幣を使う事で士気も高めた。一作目がコケたらBayは破産。「監督刑務所」見事に回避して儲けた金で創られたのが「アルマゲドン」。CMディレクターとしてカンヌ広告フェスティバル金獅子賞、編集の上手さは誰もが認める一級品。
「Bay-hem」バッドボーイズで確立。斬新でスタイリッシュな映像、火力を特長したド派手な演出、アメリカ軍をカッコ良く描く事で本物の兵装が使える等。ダンサブルなカット割りで「マトリックス」始めアクション映画の手本に成るが、彼が手掛けたCMの多くは「車」カーアクションを撮らせたら当代一、Steven Spielbergもベタ褒めで、ソレが「トランスフォーマー」繋がる。彼はVFXの先駆者、Digital Domain社を買収して「タイタニック」アカデミー視覚効果賞。「人物を中心にカメラを螺旋状に上昇しながら撮影」Bayの特許と言って良い。ダメな点はLGBTQと眞反対の女性のセクシーシーン。ガンアクションも結構いい加減な描写が多く、Lawrenceの所作が在り得ないとロス市警からダメ出しされ、本物の警察官が演技指導。彼の功績は決しておバカ映画の比では無い。
「Bayの映画は人物が描けず爆破だらけ」論評する方も居るが、マイクに変わって言わせて貰えば「お前の目は節穴か?」(笑)。バッドボーイズのプロットデバイスは「家族」。ゴッドファーザーに代表されるアメリカ人の血脈。Smith 55歳、Lawrence 59歳だが、マーカスは加齢を弄られ眼鏡を掛けたりEDの薬を試したり。対するマイクはアンチエイジングで見た目は全く年を摂らない。マーカスの家族はアクションの一服の清涼剤。此のプロットをソックリ拝借したのが「ワイルドスピード」。日本映画にも通じる家族の温もりを大切にする。なぁーんて真面目にレビューする人って居るのかね?(笑)。
【ネタバレ】物語の核心に触れる考察へ移ります。自己責任でご覧下さい【閲覧注意!】
私はシリーズが御長寿なのは、Lawrenceの人格の賜物だと思う。大ヒットした事でSmithはハリウッドを代表するスターに成長。ギャラで揉めるとかコンビが不仲な事も多いが、彼は徹底したコメディリリーフ、正しくはComic Reliefで、起源は「マクベス」の門番、日本なら水戸黄門のうっかり八兵衛。緊迫した場面を和らげる重要な役割で誰でも出来るモノでは無い。バッドボーイズの「主演」は飽く迄、Martin Lawrence。何よりソノ事を誰よりも理解してるのが相棒のSmithなのだ。
「RIDE OR DIE」直訳すればノルかソルか、ヒップホップのスラングで「一蓮托生」船に乗るなら同じ運命と言う意味だが、彼等がピンチを迎えると必ず唱える合言葉「We ride together We die together BadBoys for life」共に生き、共に死ぬ、一生悪友。ビンタ事件は無かった様なリレーションシップの表れ。Michael Bayも懲りずに登場。
私は学生時代に作家を目指し、短編が出版社から賞を頂き、ドラマ化された事も有ります。良い本を書くテクニックに「Instrumental Conditioning」行動主義心理学が有る。オペラントとも言いますが、報酬や嫌悪に適応し自発的に学習。分かり易く言えば物事に緩急を付けて相手、つまり映画では観客の期待するモノを描く正の強化、反する展開は負の弱化。フローチャートは6つに分岐、モデリングはミステリー映画でもアクション映画でも等しく存在。Bayの映画を「頭カラッポ」書く方が居るが、失礼ながら勉強不足。秀逸なのはコンポジションの勝利で、本作も常に貴方の頭を刺激し続けてる筈。
自虐ネタと言うか、Lawrenceが私生活で呂律が回らない健康不安説が根強く、ソレをネタにした臨死体験。彼の「ビッグママ・ハウス」興業的には成功したが、批評家から散々で深刻に悩んだらしいがコメディは浮き沈みも激しく、Smithのアホ面にビンタするのもアカデミー賞のパロディ「お前何やってんだ、俺のキャリアまで台無しにするつもりか!」てね(笑)。互いが互いを笑い者にする事で禊と言うケジメを付ける、自浄作用が働くのもバッドボーイズらしくヒップホップのノリの成せる技。
公開と同じタイミングで、テレビ東京の人気番組「激録・警察密着24時!!」過剰な演出や不適切な内容で、BPOは審理に入ると公表。逮捕の4人の3人が不起訴にも関わらず言及しない。バッドボーイズ顔負けの刺激的なナレーションも問題視され、番組は製作中止。私も各局の警察24時は好きですが、以前からマイアミ警察じゃ有るまいし、刺激的な事件が日本で起きる事は珍しく、取材の待機も大変だと思ったら警察の番組で捏造。公務員で有る警察官をイケメンとかリーゼント刑事とかスター扱いするのも不愉快。
アメリカの刑事ドラマも創り難い環境の変化も見逃せない。「ダーティハリー」今観ても革新的ですが刑事=ヒーロー、ソレはアメリカ軍も同じで「彼等は日々、凶悪な敵と戦ってる」イメージがサブリミナルと言う論調が、今のアメリカ社会の空気感。警察を前向きに描写するメディアを軽蔑する言葉「Copaganda」警察の負の部分は隠蔽し上辺のカッコ良さを強調するプロパガンダは、Smithのビンタ事件よりも深刻だった。
本作も「警察も悪い事をヤッてます!」開き直る事で、世間の批判を躱す戦法。本作の主役は「黒人」二人の有名俳優「お前らも警察に手を貸すのか」批判の矢面に立つ。私的にはエンタメでソコまで考えないとアカンのかと、2人に変わって頭を抱えたく為る(笑)。雁字搦めのコンプライアンスの波は、バッドボーイズでも打ち消せない。結局はワイスピがマネた様に「家族」増やす価値観しか打開策が無かったのだろう。何だかんだ言いながら日本は平和で安心安全。京都府警の皆さん、今日もお仕事ご苦労様です!。
5作目も決定!老老介護の刑事ドラマ(笑)、日本も「あぶ刑事」ヒットしたから大丈夫よ。