イルーナ

セーヌ川の水面の下にのイルーナのレビュー・感想・評価

セーヌ川の水面の下に(2024年製作の映画)
3.5
現在開催中のパリ五輪。
トライアスロン競技はパリのシンボルの一つ、セーヌ川で行われましたが、道頓堀の数倍の汚さ(これでもここ300年間で一番きれいな状態らしい……)に加え、連日の降雨で水質悪化したにも関わらず強行開催。
その結果、競技の後に10回も吐く選手が現れたりするなど、問題が次々に噴出する事態となりました。
ある選手に至っては、「コカ・コーラやスプライトのような味ではありません。明らかに、橋の下で泳いでいるときに、あまり考えるべきではない匂いを嗅いだり、見たりしました」と発言。
一体何を“見て”しまったのでしょうか……

そんな訳で本作は、「セーヌ川にサメが出現!しかも異常な成長の早さと単為生殖まで身につけてしまった!」という、いかにもB級モンスター映画な筋書きながらも、サメ映画らしさを感じさせない洒落たタイトル。
加えて、これだけの異常事態でありながらトライアスロン大会を強行するという、まさにパリ五輪への当てつけみたいな内容。
もちろん、この風刺は『ジョーズ』からの伝統でもありますが。
さらにサメを保護しようとするお花畑な環境活動家に対しても、向けられる眼差しは辛辣そのもの。
シー・シェパードのポール・ワトソンにも言及していた辺り、明らかに狙っている。
人間の憐憫なんぞ、サメに通用するわけがない!
クライマックスの登場人物ほぼ全滅レベルのサメ祭りは壮観だし、「そうはならんやろ…」 「 な っ と る や ろ が い ! 」なオチも素敵。
セーヌ川、汚いだけでなくサメ抜きでも普通に危険な川じゃん!

また、パリの街のロケーションがサメ映画らしからぬお洒落さですが、避難しやすい川だけでなく、逃げ場のない地下水路や地下墓地も舞台にした演出も面白い。
冒頭の海中描写も、ゴミまみれでありながら神秘性や美しさを感じさせるものがあります。

トライアスロン問題だけでなく、開会式からしてグロ&ポリコレまみれ、誤審祭り、ヴィーガン食ばかりで、イギリス人にさえ文句を言われるレベルの食事の酷さなどなど……
悪い意味で話題盛りだくさんのパリ五輪ですが、本作の描写やメッセージはかなり的を射たものだったんだなぁと思いました。
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