【アンチ世界】
自然なストーリーで面白かった。
お仕着せがましくなく、良い意味でちょっと考えさせられる。
河合優実さんの魅力も存分に感じられるし、ストーリーも興味深い。
レビュータイトルに”アンチ世界”なんて書いたけれども、それは世界を全部敵に回すという意味ではなくて、昔から存在したり、誰かが勝手に作り上げた妙なカテゴリー世界へのアンチということだ。
最近、街ですれ違った女子中学生らしきグループが「ずっと好きだった人が突然嫌いになることってあるよね〜?」「あるある〜」と話を弾ませていた。
これを友人に話したら、「おまえ、それが蛙化現象って言うんだよ、ったく〜」と笑われた。
ネットも含むバカなメディアやSNSが、”蛙化現象”なんてカテゴリー作って喜んでいるみたいだけれども、そんなのは実は昔からあったような気がする。
僕にもそんなところはあったし、そんな彼女と付き合ったことだってある。
その彼女と付き合う直前に付き合っていた彼女と少しギクシャクしているのを知って、ある週末僕のマンションにその彼女が押しかけてきた。
それから沢山セックスもして付き合い始めたら、ある時、密かに引き出しにしまってあった昔のの彼女の写真と預金通帳を人質に持ち去って行っていた。
だけど、その後、今で言うところの蛙化現象が発動して”別れたい”と。
そして、同意した僕に預金通帳は返してくれたけど、写真は会社でシュレッダーにかけたと言われた。
世の中はカテゴリー分けが大好きだ。
世界が多様であればあるほど分類して理解したふりをしたがるものだ。
でも、案外自分は自分じゃないのか。
人を好きになったり嫌いになったりするように、自分自身を嫌いになったり、やっぱり好きだったりもする。
僕たちは世代別のカテゴリーとは関係なく、そんなふうに生きてきたんじゃないのか。
序盤の、友人が亡くなったのに、直前に電話で会話していたことを話題にして話題の中心であろうとする人なんて結構いるように思える。僕の大嫌いなタイプだ。
パーティなんて面倒臭いのに、取り敢えず行ってみて、パーティは楽しいなんて価値観を押し付けないでくれよなんて実は強く考えたり。
多様化なんて声高に言うが、そう言う意味では逆説的にみんな同じじゃないのか。
そう、多かれ少なかれ似たようなところがあったり、似たような経験をしているんじゃないのか。
この「ナミビアの砂漠」はあるがままの世界であると同時に、分類好きの世界へのアンチでもあるように思える。
どこか世界は裏表だ。
だが同じなのだ。
最後のマンションの場面は、鏡に映ったような反転した部屋になっている。
多様化も、みんな似たり寄ったりも、どっちも出所は一緒なのだ、
監督はやりたいことは特にないのだけれども、映画作りは大変だけど楽しいらしい。
お仕着せがましいプレッシャーなんかないところで、自由にやってみて、その中で見つければ良いのだ。
そう云う意味では、アンチ世界であって、大好き世界かもしれない😁