ワンコ

雨の中の慾情のワンコのレビュー・感想・評価

雨の中の慾情(2024年製作の映画)
5.0
【人間】

とても面白かった......僕はね。

夢、うつつ(現)、妄想、現実、夢の中の妄想......

映画「雨の中の欲情」は、これらが過去と現在を行き来しながらシームレスに展開する。

つづら折りのようでもあるし、義男の頭の中で夢や妄想が現実に向かって変化していく様は、”映画で観た自分の記憶”を映画を観ながら自分自身で組み替えていく感じがして、実はこれがシュールさとなって、つげ義春作品の世界観を追体験するような不思議な感覚を覚える。

漫画「雨の中の欲情」は短編で、映画では冒頭の場面に集約されているが、泥の中に勃起したナニを突っ込んでしまって穴が空いてしまうシーンがあるのだけれども、それもしっかり描かれているので笑ってしまった。でも、あんあふうに90度には空かないと思う......漫画でもそう考えたけど......すみません......不謹慎で。

ただ、全編を通して、どこか非日常と云うか、どこかに不穏な空気をはらんだ状況でも、人は欲情するのだという、命の危機でも人は何とか生きようとするという、性と生への執着が良く伝わるし、それが人間だという気もする。
更に言えば、こうした状況でも人は人を愛するのだということも感じられてとても面白い作品になっていると思う。

映画を観ていて「ジョニーは戦場へ行った」も思い出すし、片腕を失った義男やオヤジを見ると、つげ義春さんが長らくアシスタントをしていた水木しげるさんのことも考えずにはいられなかった。

きっと、つげ義春さんや、その作品、そして水木しげるさんへのオマージュでもあるのだろうなとも思う。

映画「雨の中の欲情」は、こんな不穏な時代にあって、反戦も意識していると思うし、繰り返しなるが、どんな状況でも人は人を愛すし、性や生に執着するのだし、死も含めて人は分かれと出会いを繰り返すのだと、そして、人は頭の中で思い出を自分に合ったストーリーに組み替え、更に、現実に向かって微調整していくというシュールなストーリーの映画作品だと思う。

興味のある人は是非。
ワンコ

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