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まるのunkoのレビュー・感想・評価

まる(2024年製作の映画)
3.5
人気アーティスト秋元(吉田鋼太郎)の元でアシスタントとして働く沢田(堂本剛)。気力が湧かないが職人の仕事をしていると自分を納得させ毎日を過ごしていた。ある日、自転車で事故し利き腕を骨折してしまう。秋元は無情にもタイミングだと、沢田を首にする。
収入源も断たれ、呆然としていた沢田は白紙の上に1匹の蟻を発見する。蟻を囲むように丸を描いた。その丸を100万で買い取りたいというツチヤ(早乙女太一)が現れ‥。


堂本剛主演。単独では「金田一少年の事件簿 上海魚人伝説」以来。何気に当時スクリーンで観ています笑
荻上監督の前作「波紋」も面白かったので期待して初日に。

働き蟻の法則に準えて、漫画家を目指すが芽の出ない横山(綾野剛)や搾取構造を嫌う矢島(吉岡里帆)、自棄の沢田の苦悩とそこからの離脱を描く。
わかりやすいテーマで"まる"が豊富に出てくる。人の輪、地球、世の中、どんな解釈でもよいのだろうけど、右往左往する沢田を彷徨う蟻に見立てる。働き蟻の群れ(黒い円)に抗って速攻死んだり、生き残っていたりしているのが面白い。監督ならではのブラックジョーク。

沢田の描く円はよくわからない理由で評価されるのだが、モー(森崎ウィン)に描いた円は確かに良かった。筆ペンっていうのもGOOD。
公式HPのプロダクションノートに書かれていたが、堂本剛が描く円は逆手でカットを割らずに上手にできたらしい、また加工された光のようにみえた西日は、実景を撮影しているらしく驚いた。この辺りが"持っている"タレントということだろうか。

前作のラストに比べると、意表をつかれる爽快感はない。しかしながらエンドロールの堂本剛「街」"movie ver"が流れた瞬間、ジャニーズで忙殺、ギターに目覚め、バンド結成、大喜利ライブ(小喜利)、そしてジャニーズ退社、結婚、人生がこの映画の題材と繋がる。それが凪のように心に染み入る終わり。
ぜひ、音響のいい映画館をオススメします。

ただ好き嫌いが激しくわかれそうで、公開規模に対してヒットするのか心配になる。そんなことが頭に浮かぶ時点で私も画廊の若草(小林聡美)のような俗物なのだろう‥。
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