ワンコ

まるのワンコのレビュー・感想・評価

まる(2024年製作の映画)
4.4
【アートのお値段】

最期の場面、きっとこのアート作品が一番の傑作ってことになるってことだろうなと思っていたら、ドンピシャでそうだったので加点した😁

20年以上前、ある日本人の女性人気作家さんの作品を購入して、10年ほど前に売却したら倍以上の高値で売れた。

今だったらもう少し高く売れたかもしれないが、多作な作家さんなので実は希少価値は高くないと個人的には思う。
そのうち値段は下がるということだ。

前に観た「アートのお値段」というドキュメンタリー映画を、この映画「まる」は、「〇(円相)」を書いた作家のストーリーに仕立てたような感じだが、よく考えると面白いところがいくつかある。

“円相”は長いこと日本人の特に仏教のお坊さんの書のテーマだ。

こんな現代アートになりそうなことを日本人は昔からテーマにしていたのだ。

何かをデフォルメしたり、例えば、鳥獣戯画の甲巻などは代表的だが、北斎漫画もそうだけれども、日本人のアートに対する感性は独特なものがあると僕は思っている。

戦後フランス国籍を取得したがレオナールフジタも似たところはあったと思うし、日本の漫画やアニメカルチャーは鳥獣戯画や北斎漫画の延長線上にある気がする。

ただ、現代アートを考えるときに、見逃すことが出来ないのは、アートディーラーだ。

「アートのお値段」でもそうだったが、価格を吊り上げるのに奔走していて、その結果、現代アート作品を手に入れた元投資銀行家のリッチな人物が、その作品をジューシーとのたまわっていたのは、アートディーラーの受け売りだろうと笑ってしまった。

こんなことを言っている僕も実は円相の書を買おうか悩んだことがあった。

ただ、現代の高名で有名な奈良のお坊さんの書が手に入ったので、円相の方はやめたが、序盤でちょっとふれた女性作家さんの作品は売却したものの、こちらの書は今でも持っている。

もし、世界のどんな絵画でも一つ手に入ると言われたら、僕は間違いなくピカソの「泣く女」をチョイスする。

ただ、実は毎日観たいとは思わない。
気が変になるかもしれないという気がするのだ。

もし、個人でアート作品を購入しようと思うのであれば、家に飾って毎日観ても飽きない、それでいて穏やかな気持ちになるとか、高額とかそんなことではなくて、日々の活力になるとか、想像力を刺激するとか、室内をアーティスティックに彩るとか、美しく見せるとか、そういった作品を選ぶことをお勧めする。

そんな感じの蒐集を通じて美術館が出来ることがあるが、東京から近いところで言えば、箱根のポーラ美術館はそんな良い美術館だと思う。

身近に良い美術館があることは良いことだ。
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