【過剰に感動させようとしない演出が良き🫶】
実話ベースの物語に惹かれて鑑賞。
🏈全体の感想
なんとなく作品のテーマから、感動する系の作品をこれから観るぞという心構えで劇場入りしたんだけど、開始早々に、これは自閉症のリアルを描いた作品なんだと思い直した。親ガチャなんて言葉が最近流行っているけど、それをいうなら育児ガチャもあるはずで、どんなに愛情を持って接しても"育てにくい子ども"というのは存在する。それは相性の問題で済ませられるものではなく、常に取り扱い注意の地雷と生活をするのにかなり近い。自閉症を取り扱いながらも、自閉症の特性を神格化せず、感動シーンを無理に差し込んだりせず、淡々と家族の奮闘を描いているのが良かった。
🏈ママの描き方
パパが週末でかけるようになってからママの表情も服装も変わっていく様子がとても良かった。序盤ではパニックになった子どもと一緒になって母親まで周囲を威嚇しているような言動があったので、子どもの一番の理解者であろうとするあまり、子どもの守り方がおかしな方向にいってないか?と序盤から不穏な展開。でも振り返ってみたら、これらは育児に追い詰められていたことの表れでもあり、心の余裕を失っていただけなのかなとも思った。序盤の母親の行動は本来の彼女の性格とはかけ離れたもののように思える。育児ってほんと大変そう…
🏈主人公の変化
これまでの生活圏から抜け出して新しい体験をすることで主人公に変化があったのがとても良かった。楽しいことと我慢することがトレードオフの関係になって、苦手な人混みや騒音を我慢できるの偉いねって拍手してあげたくなった。
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⚠️この先、ネタバレあります⚠️
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🏈印象に残った台詞
「あの子はまだ許し方を知らないだけよ…」
🏈バス停のエピソード
バス停のベンチの定位置は自閉症の人にあるあるらしくて、SNSでもファミレスとかフードコートの席で食事をしていたら、子どもが駆け寄ってきて「そこは僕の席だ!そこをどけ!!!」と大声で叫ばれたといったエピソードはたまに見かける。こういうのってどうしたら良いんでしょうね…もちろん席を譲ってあげるのが一番平和的な解決だろうけど、先に座ってた人だってもしかしたらこの席が良い(喫煙ルームから遠いとか、近くに騒がしい人がいないとか…)と思ってるかもしれないし難しいところだよね。それに劇中にもあったけどかなり高圧的な物言いで、譲って当然という態度だと却って譲りたくなくなっちゃうよね。自分は性格がだいぶアレなので、どっちも譲らない自閉症同士でバッティングしたらどうなるんだろう…などと考えてしまった。なんか凄そう。
🏈列車のエピソード
ここでも自閉症が大爆発してウェイターにあまりな態度で子どもが命令していて、頑なに"プリーズ"を付けないんだよね。絶対に付けないの。ずっと不思議だったんだけど、もしかして「決まりを守ってないのはお前のほうだ」「ウェイターは給仕が仕事で僕は客だ。それぞれの役割を全うするのは当然だからプリーズをつける必要がない」って思っているのかなと思った。こういうのって言葉遣いのルールを上書きして、社会に馴染めるように育成するのは難しいのかな。主人公は10才だし言い方1つで平和に交渉できることを身につけても良い年頃だと思うんだけどな。個性がそれを阻むのかしら。母親も父親も子どもに献身的過ぎるように思えた。
🏈横柄な王様
主人公は二言目には「解決してよ!」と親に命令し、別れ際の挨拶では「王様のキスを」とやはり自分を親より上にポジショニングしているのがとても気になった。幼少期における人格形成において、言葉の影響はとても大きく、この"王様"という表現が、これまでの家族の接し方とも相まって却って子ども特有の万能感を増長させているように思えた。
🏈学校も大変…
ママでさえ一日一緒にいるのがしんどいのに、平日一緒にいる学校の先生やクラスメイトへの配慮はないの?と思った。暴力や暴言など加害性のある子どもと一緒にいるクラスメイトのケアを度外視しているところは残念だった。せめて学校とは別に集団生活のトレーニングをしたほうが良いと思うんだよね。支援学級じゃない普通科の先生に預けても面倒見切れないと思うし、クラスメイトだってケアラー要因としているわけじゃないしさ。
🏈その他、いろいろ
・感覚過敏の気持ちはちょっと分かる
・学校行くならヘッドホンとか耳栓は必需品そう
・自分だってサッカー下手くそなくせに一丁前にゴールキーパーに悪態つくのすごく嫌。学校のクラスメイトもサッカーのチームメイトも主人公の被害者だよ。
・宇宙工学のラボは同じ特性の子もいそうだし、主人公の居場所になりそうでとても嬉しい。パパ、ナイス👍️
・あの年齢の仕草を見て自閉症の診断を受けに行く両親の行動がとても良かった。
・教師を陰謀論者扱いするのはGoogleがいけない。
・宇宙に興味を持つ⇒自然現象に興味を持つ⇒環境問題に興味を持つ、みたいな感じかな?主人公はとても難解な論理を理解しているように見えつつ、論文の受け売り(つまりは暗記)に思えて、どこまでが暗記でどこまでが自分の考えなのか分からないなぁって思った。そしてデマ情報を信じちゃったらあとで情報を上書きするのはとても大変そうで、この先の主人公の行く末もとても気になる。
・長男(10才)が十分育てにくい子どもだって分かってるだろうに、なんでもう1人子どもを作ったんだろうか。あんなに毎日キンキン怒鳴る環境で、汚いもの扱いされて、下の子が可哀想。この環境だと下の子も情緒不安定になっちゃわない?あと下の子も特性持ちだったら子育てカオスにならない?大丈夫…?
・冷たそうな上司が案外ファミリー思いでギャップが凄い。
・パパが息子をガードしながら歩いてるの愛🫶
・パパが息子の言う事を受け流すのがだんだん上手くなってる。
・アルバイトや店長の扱いが上手いパパ
・子どもと感動を共有できないシーンが続くと親ってほんと大変だなって思う。
・父親は子どもから目を離しがち。世界共通?
・仕事を飛ばした言い訳が週明けなのはさすがに遅いんじゃないかなって☺️💦
・海外のトイレの汚さ…
・子役がうますぎる。育てにくい顔してる。
・主人公の応援したい条件に完全一致するチームはこの世に存在しない可能性まである。1つのズレも気にしそう。パパがんばれ📣
・エンドロールでこの作品のモデルになった親子の写真が流れて、本人はめちゃ可愛かったので、だいぶ作品と印象が変わるなと思った。パパも優しそうで素敵な親子だった。誰かドキュメンタリー作ってくれないかな。
・ハンカチの出番は最後までなかった。
【余談1】
発達障害の人は、人より社会性を身につけるのが遅くって、定型の人が小学校〜中学校くらいで身につける社会性を20才を越えてからようやく自覚し始めて身につけるようになるってどこかで聞いたことがある。人よりゆっくり社会に馴染んでいくのが発達の特徴らしい。だから発達の人は年齢より(内面が)若く見られることが多いんだとか。
【余談2】
本作とは全然関係ないんですが、サヴァン症候群を扱った書籍『ぼくには数字が風景に見える』がとてもオススメです。
https://bookclub.kodansha.co.jp/product?item=0000206571
【余談3】
ずっとアメフトチームの応援の話かと思ってたんだけど、どうやら種目はサッカーだったみたい。みんなのレビューを読んで気付きました😇