二度と戻らない夏に思いを馳せ、ひとつひとつの思い出を噛み締める。ゆったりと、大切だった時間の経過が伝わるとても素敵な作品だった。
本作は、娘と父親のある夏のひとときを描いた「aftersun / アフターサン」を想起させる世界観の作品。
本作は妻を亡くしたばかりの佐野が幼馴染の宮田と共に妻と出会った伊豆のリゾートを訪れる。佐野はそこで妻の凪が無くした赤いキャップを探し始める。というのが本作のストーリー。
本作で印象的だったのは時間の経過。佐野が凪と出会ったのは2018年、さらに5年後の2023年に伊豆のリゾートを訪れている。5年あれば、色々なものが変わってしまう。かつて訪れたリゾートは閉館してしまうし、当時あったレストランも閉店してしまうし、人の生死は何があるか分からない。そして、無くした赤いキャップはなかなか見つからない。
そんな5年の経過を噛み締めながら佐野は赤いキャップを探す。本作は前半を現代パート、後半を過去パートに大きく分けている。前半の佐野の何気ない仕草や行動が後半に活きてくる構成も良かったし、思い出がより鮮明に浮かび上がり、染みてくる。コンビニの前で佐野と凪がカップラーメンを啜るシーンもめちゃくちゃ良かった。
以下は個人的なメモ
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凪が忘れた赤いキャップを心の拠り所にする佐野
セミナーに所属することを示す金の指輪を心の拠り所にする宮田
宮田の指輪をつけてみた佐野は結局その指輪を捨てる
山本奈衣瑠さんの雰囲気が素敵
「aftersun / アフターサン」に近い作風
タイトル
コンビニの前でカップラーメンを啜る時間
あのときあの瞬間一つひとつに思い出が詰まってる。
鏡越しにアレを映し出すのがあまりにスマートでお洒落
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