RIO

エフィ・ブリースト デジタルリマスター版のRIOのレビュー・感想・評価

4.0
合理主義に生きるのであれば親元から離れないで何もしないままでいい

何も変わったことはなかった
ただ庭の形が変わるだけ

何者にもなることはない
19C後半の家父長制度の中で妥協して生きるのは自分の生き方ではない

そう言っているように聞こえました

テーオドール・フォンターネ「エフィー・ブリースト」にファスビンダーが脚本を加えナレーションが入る
言葉に合わせ淡々と人々が行き交う ほぼ動かない鏡に映る話し相手の姿やレース越しに見える相手の動きが表情を豊かにしていた

鏡 その中に映る人物の内面や真実を象徴する重要なモチーフ
自分の内面と向き合う瞬間
鏡の中の姿は彼らの内なる感情や抑圧された欲望
エフィーの顔には他者や社会に対して見せている表面的な姿だけでなく彼女の孤独や絶望あるいは逃げ場のない状況に対する無力感 彼らにとってエフィーはどのような存在であるか
鏡越しに見る彼女の心が投影する虚像であるとすれば彼女が本来の姿として存在できていないその姿は孤立している

ファスビンダーが鏡を使ってエフィーの本心や内面を映し出そうとした意図は視覚的な美しさを超えて心理的な深みを映画に与えているように感じられます

ハンナ・シグラが輝いてました

ドイツ帝国の成立後 ビスマルクによる統一国家が確立されてから数十年後の時期 厳格な社会的規範が支配的で特に女性の役割や地位に厳しい制限があるなかエフィーは自由にしていたことで周囲からは冷たくされる

エフィーの合理的に変化がないという言葉の奥から聞こえてくるもの

自身の置かれた状況に対して理性や合理性をもって対処しようと努めたい 社会の期待に応える家族の名誉を守るには合理的であることを自らに強いる
そんな葛藤から生まれた孤独や絶望
彼女の豊かな感情を満たすことのないまま過ぎていく日々に悲しみが感じられた

庭の形が変わっただけという現実
エフィーの後悔と虚無感
彼女が生きた時代について悲劇とその無意味さを強烈に描き出している監督が意図したラストシーンだった
RIO

RIO