同名小説のテオドール・フォンターネ原作は未読。今まで観たファスビンダー作品の中では異例の文芸作品を題材にしたためなのか地味で、生真面目すぎるぐらいな内容であった。
もちろんファスビンダーが伝えようとしている抑圧された歴史の因習(女性、マイノリティ)や家長制による不条理を描いているのは理解できるが、製作当時は20代後半となると子供ながらに背伸びをして大河ドラマを作ろうとした印象も否めなかった。
この映画から思い出したのが、キューブリック「バリー・リンドン」。劇場公開時期は本作の方が若干早いが、お互いどこか意識をしている印象を感じた。
鏡を多用した絵画的な美しさと相反するかのような物語との剥離(映像とリンクしない)や、確信犯に近い古典的なナレーション、やたら長尺すぎる抑揚のない小説のトレースなどで拒否反応を示す声も公開当時からあったようであるが、文芸作品の大河ドラマとしては壮大な失敗作かもしれないが、ドイツ文芸映画としては後世に残る名作でもある微妙なラインを狙ったのではないだろうか。本作は素人、シネフィルのような玄人を問わずに人を選ぶ作品かもしれない。
〈ライナー・ヴェルナー・ファスビンダー傑作選〉
[Bunkamuraル・シネマ 渋谷宮下 16:05〜]