作家・中條ていの連作短編集「アイミタガイ」を黒木華主演で映画化。
カメラマンの親友を失ったウェディングプランナーの梓は、親友に相変わらずLINEでメッセージを送り続けていた。親友の両親は、娘が生前に児童養護施設と親交を深めていたことを知る。梓の恋人である澄人は、結婚願望がないと公言する梓との関係について悩んでいた。梓の叔母がヘルパーとして通っている家の女主人はピアノが趣味で……。
〈アイミタガイ〉＝〈相身互い〉とは、誰かの事を思ってしたことは巡り巡って見知らぬ誰かを救いそれはやがて自分にも返ってくるという意味なのだそう。そのタイトルの通り、梓という女性と亡くなった親友を中心に、彼女たちの周囲の人々の想いや行動が巡り巡って互いに影響を与えていくという群像劇になっている。
こういったタイプの映画はときに作為的になりすぎるものだ。本作にもその傾向はあるものの、起こる偶然が「ありそう」なレベルで実に地味なのでギリギリリアリティを保っている。親友の死以外に劇的なことはまったく起こらないのだが、それぞれの出来事が影響し合って最終的にかなりエモーショナルな瞬間を生み出すという構成がかなり上手くいっていて、観ていて心地よかった。劇中でも言及されているように、良い人しか出てこないので誰にでも安心して薦められる。
主演の黒木華はもちろんなのだが、今回のMVPは澄人を演じた中村蒼かな。人が良くて不器用で正直なキャラクターを、とても魅力的かつ「いそう」な雰囲気で見事に演じていた。特にトイレから出てくるシーン、最高。あと、草笛光子が出演しないと成立しない映画でもあったと思う。
