2024.09.12
(一応)予告を見て気になった作品。
監督の前々作『君たちはまだ長い〜』の教材ビデオ感と副題的に、奨学金制度の実態と課題を、ストーリーよりもメッセージを優先して描く作品に思えて、これは奨学金を利用してない僕が観るべきものじゃないのかと思っていました。
まぁそんなこと言っていたら何も観れないですし、『君たちは〜』と原作の有無で違いますし、予告編的には青春ものな感じもするので今回鑑賞です。
高校3年生、大学受験を控えた唯野空は、進学を考えていながらも、家庭の経済状況から国公立に選択肢を絞られ、プレッシャーを感じていた。
そんな時に知った“奨学金制度”。
第一志望の国立大学は落ちたものの、奨学金のおかげで私立大学への入学を決める。
しかし空を待ち受けるのは、返済という不安、学生のうちに少しでも返済しなければという焦り、経済的支援の望めない家族との不和、見えない将来に対する漠然とした絶望だったー。
結局教材ビデオやないかーい
様々な価値観を持つ大学の同級生たち、暖かく見守り、支えてくれる家族の存在と、広げられるドラマ成分がありながら、結局奨学金制度や高学歴優遇、奨学金制度撤廃のための増税などの描き方が、ストーリーの中で不自然に挿入されているし口調も説明セリフだしで、やはり教材ビデオ感は強め。
多少ご都合主義でしたが終盤の展開や、その手前の空が社会的、経済的、人間関係的に八方塞がりでどうにもならない状況に陥ってしまったところに胸糞エンドが期待できそうだった分、やはり登場人物に制度や今の日本の高等教育についての説明をさせるのは個人的に好きではありませんでした。
それが気にならないぐらいの勢いか、不自然に見えないぐらいのさりげなくかつ大胆な描写が必要だったように思います。
奨学金制度については利用していないのでその中身や実態は今作を見てほーんてなるくらい。
学歴も、新卒就活の頃は僕も使わせていただきましたし大学で貴重な経験もできたので行って良かったと思うのですが、別に大企業に入ることが全てじゃないし、大企業に入りさえすれば将来安泰かと言われるとそうでもないし、それ以降の人生の方が長いし。
作中で言及されていたように、敷かれたレールを歩くことも外れることもどちらも不安が伴い、勇気が必要なことだとは思いますが、まずは将来何がしたくてそのために何を学びたいのか、じゃないですかね。
学歴社会だとしても、自己実現のためなら大学進学はマストではなく、専門学校や短大、高卒で働くことだって選択肢の一つとして十分検討の余地はあると思います。
まぁそれを18歳の時点で決めなさいというのも厳しい話ですが、個人的には大学に行きたい理由が将来のためというよりも、できるだけ長く学生でいたいという動機が多いことも、奨学金制度をはじめとした日本の高等教育の問題点の一つなのではないかと思っています。
大学に入りさえすれば、良い企業に入りさえすればと、人生のだいぶ手前の地点にゴールを設定するのではなく、長期的に自分の人生について考え続ける力を養えればいいのにねって、そのことを作中で描いてくれれば良かったのに。
個人的に良い方の意味で気になったキャラは男性陣ですかね。
ヒモで甲斐性無しのダメンズ、状況が違った時に大学に進学しただけかと思いきやちゃんと自分のことを考えてくれている兄、意識高い系大学生。
恋愛や家族ドラマ、大学内の群像劇に出てきても良さそうなキャラだったのに、上述の通り言動が説明口調で妙にそこだけハキハキしているから、キャラがブレていたように見えたのが少し残念でした。