春とヒコーキ土岡哲朗

グラディエーターII 英雄を呼ぶ声の春とヒコーキ土岡哲朗のネタバレレビュー・内容・結末

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このレビューはネタバレを含みます

怒りながら、その怒りをパワーに変えてみせる。

理不尽なシステムに従うしか先はない。
主人公ハンノは、戦争で負けて捕まり、コロシアムで見せ物として殺し合いをさせられる。自分の尊厳を奪うシステムにブチギレながら、そのシステムに乗っかる。怒りを原動力にコロシアムで力を発揮する。コロシアムというシステムが憎いけど、それに従って戦うしか生きる道がないので。この姿勢がかっこいい。現実逃避はせず、でも理不尽さに怒り続けて麻痺することはなく、そこでのし上がれば自分の希望を通す力が手に入るなら、のし上がるために戦う。
それが、ハンノだけじゃないと分かった瞬間、さらにその説得力は増した。ハンノたちの下した敵・アカシウスも、極悪人ではなかった。彼も、不必要と感じる殺生には乗り気ではなく、敵国への敬意を欠く双子皇帝を良く思っていない。最初、ハンノが妻を殺されたことへの恨みで物語が始まったとき、もちろんその怒りは当然なんだけど、妻も戦士として戦場に出ているのだし、お互い様だったのでは、と一瞬思ってしまった。けど、そんなことは重々承知の映画だった。敵にもある程度の敬意を持った上で戦っている。アカシウスは、お互い様な状態に身を置いている。本当に憎たらしいのは、上からコロシアムを見下ろす双子皇帝である。
名作である前作とのつながりも途中から色濃くなるが、正直それがなくてもいいくらい、今作のキャラクターがかっこいい。

敵は、ずるいヤツら。
不安定な双子皇帝の、権力を持ってはいけないヤツらが持ってしまった厄介さがすごかった。彼らもたちの悪い奴らだが、その状況を作った先人たち、つまりはやはりシステムが悪い。彼らも、そのシステムの中で上の立場なだけで、やはりシステムに縛られた者たちなのかも知れない。
そして、最後に本当にずるいやつとしてハンノと戦うのは、マクリヌス。彼は、双子皇帝が上にいることは間違いなので、それを覆すべく、双子を暗殺する。でも、双子をどかすのはいいけれど、それが結局自分が玉座に着くためなのと、コロシアムの戦士たちを利用しているところがずるい。結果、狡猾なヤツとしてハンノに討たれて終わる。
でも、マクリヌスがずるいという扱いになるのも、システムに縛られすぎた考えかも知れない。システムに外側から器用に抗うのはずるで、ハンノみたいにシステムに従って勝ち上がった上でひっくり返せ、という気持ちは、「こっちは不自由なのにお前だけ自由なんてずるい」という僻みかも知れない。

アクションが、迫力もあるし重厚な映画らしくもあって贅沢。
特にそれを感じたのは、コロシアムでの模擬海戦。支配者が、自分が海戦が見たいからその場にセッティングする贅沢さが重なって、それを見ることができているこちらも贅沢だった。
マントヒヒとの戦いは、「昔はこんな生き物がいたのかな……いや、いないだろ」となるくらい、リアリティに縛られない、勢いのあるモンスターバトルだった。