このレビューはネタバレを含みます
思想が強い。
思想が強いのはいいんだけど、青春映画の中で思想が不自然に浮いちゃってる感じがした。
仲間同士の関係や、年齢特有の揺らぎみたいなものはいい感じに描かれていたので、青春映画に徹すれば好きだったかもしれない。
反体制的な映画はわりと好きで、『新聞記者』や『福田村事件』は良かったと思うけど、この映画にはちっとも共感できなかった。
既存の権力や体制に対して反対意見が出るのは当然だし大いに結構。若い世代がどんどん旧体制を壊して膿を出し、世の中を改善していってほしい、と思う。
でもさ、今あるルールは守ろうよ。
反対意見があるなら、穏健な手段で訴えて、話し合って、合法的かつ平和的に変えていけばいい。非生産的で意味のない立てこもりとか、学校の物を盗むとか、笑えないいたずらとか、人を愚弄するとか、先生や他の生徒に迷惑かけるとか、そういう幼稚で野蛮な方法や犯罪行為じゃなくてさ!
そして、出された寿司は食え。
あれはないわ。
思想や意見が違っても、人として根源的な部分ーー仲間や家族が大切とか、他人に傷つけられたくないとか、お腹が空いたらご飯を食べるとか、ご飯はおいしいとか、そういう部分はみな同じはず。ご飯ぐらいみんなでおいしく食べようよ。
校長先生が終始気の毒。
権力者や体制に不満があるから、ルールを破っても治安を乱しても物を盗んでも壊してもいいよね?っていう考え方は、「政治が悪いから、貧富の差が大きいのは納得できないから、強盗してもいいよね?」っていうのと同じ。
そういう人が増えてるから、日本の治安はどんどん悪化しているのでは?
これぞ若さゆえの暴走、ってことを言いたいの?
立ち上がって異論を唱える生徒がちゃんといたのは良かったけども。
照明や歩道橋を使った演出はあからさま過ぎてちょっと恥ずかしくなったけど、音楽や、自然な演技(ひとりだけ浮きまくってる子がいたけど)、味のあるバイプレーヤーなど、いいところもあった映画だけになんだか残念だった。
瑞々しい青春映画なら、最近観た『国境ナイトクルージング』の方がよかった。