絶対の客人

火の華の絶対の客人のレビュー・感想・評価

火の華(2024年製作の映画)
4.7
PKOのために南スーダンに派遣された島田東介ら自衛隊員。しかし "非戦闘地域" のはずのその場所で戦闘に巻き込まれ、島田はやむを得ず少年兵を射殺。隊員も一名が死亡し一名が行方不明に…

島田は部隊長からその出来事の全てを無かった事にして絶対に口外しないようにと命令を受け帰国。その後、花火工場で働くもPTSDを発症した事で仕事も手につかなくなる。

そんな中、花火工場の仕事と並行して手を染めていた武器製造の闇ビジネスで起きた衝撃の出来事に、自身の進むべき道に関して究極の選択を突きつけられ…

長編初監督作の【JOINT】でジャパニーズ・ノワールの傑作を生み出した小島央大監督が放つ待望の2作目は、「自衛隊日報問題」という実際の出来事に着想を得たオリジナル脚本。

その「自衛隊日報問題」とは何なのか…まず前提として自衛隊の派遣は憲法9条に違反する恐れがあるため "非戦闘地域" に限定されている。しかし実際にはその地域で戦闘が起きていた。

現実に隊員が戦闘に巻き込まれて死亡した事実はないが、ジャーナリストの布施祐仁氏がその事が記されているはずの「日報」の開示を防衛省に求めたが、廃棄されたとして開示されなかった。

ただ実際には廃棄されておらず、後に "非戦闘地域" で戦闘が起きていた事実が公になるや、自衛隊と防衛省の幹部が相次いで引責辞任に追い込まれた…というのが「自衛隊日報問題」の概要。

この物語は、もし仮にその戦闘に自衛隊員が巻き込まれていたら…という "if" を描いているが、別の "非戦闘地域" ではPKOの中国軍兵士が2名、戦闘に巻き込まれて死亡したらしい。

そんな「死」を象徴する銃とは対象的な花火は、希望や平和などの「生」の象徴。そしてその真逆に見える2つに共通するもの…それは "火薬"

使い方の違いで象徴が変わる、まるで人間の表裏を表すようなこの "火薬" こそが今作のテーマ。そのテーマと「自衛隊日報問題」で明らかになった腐敗した政府を絡めた脚本は見事!

そしてその「生」の象徴であるはずの花火…しかし一部で描かれる花火の描写は完全なるホラー。PTSDを抱えた人間が花火で受ける心的ストレス…それを追体験させる演出があまりに秀逸!

【JOINT】に引き続き主演を務める山本一賢さん含め、松角洋平さん伊武雅刀さん柳ゆり菜さんら役者陣も素晴らしい!ド傑作!


追記

残念ながら自分が参加させていただいた試写会の翌日にプロデューサー兼出演者の男が起訴され、それを受けて急遽、上映の延期が決定。

監督や出演者含めた関係者の方々は大変無念だと思いますが、外野の我々には応援して祈る以外に為す術がないのがもどかしい。

多くの映画ファンに観てもらいたい作品でもあるし、自分も試写会とは別に是非もう一度映画館に観に行きたい作品!

再びの上映決定まで頑張ってください!応援してます!