■ めちゃくちゃ良かった。個人的に自身の経験と繋がりを感じるような内容でもあって、だからすごく、記憶に刻まれたような感じすら覚えたかもしれない。もしかしたら、私にとって忘れられない映画になるのかも。
でもなんかこう、ああいった結末であった故に、この感想を書くに際してびっくりマークを用いることが憚られる。割と静かな気持ちでこの感想を書いているし。こうした映画はすぐに感想を書くことができなくて、また日にちを置いてしまった。鑑賞自体は12月6日である。
■ 私はおそらくこういった、言葉だけではとても説明しきれないような話、心や感情の存在がすべての舵を切っているような物語を「人間的」だと感じがちで、すごく好きだ。
マリオ(←うだつの上がらない青年)はパブロ(←祖国を追われ亡命してきた詩人)に、言葉というすべ――それは魔法の杖にもなるし、武器にも盾にもなる――を教えてもらう。それは彼を成長させ、彼を彼たらしめた。
私はここらへんの描写というか、展開がすごく好きだった。
≈≈ ※ ここからネタバレ ≈≈
■ でもやっぱり想像してしまうのは、彼がその素晴らしいすべを手に入れなければ、彼が死ぬことはなかっただろうということ。だからどうしても思い返すと難しい感情になる。
そのすべを手に入れなかったら、パブロに出会わなかったら、マリオにとっては良かったのか? と考える。私はそんなことは無い、と思う。でも、じゃあそれをパブロの立場でも同様に思えるのか? とまた考えると、それはそれで難しいようにも思ってしまう。
≈≈ ※ ここまでネタバレ ≈≈
■ そうした答えの存在しない問いがどうしても自身の内には生じ、答えがない、それ故にこの映画のことを思い返したとき、その問いにまた対峙することになるのだと思う。
でもそれは不快になる体験ではなくて、なんとなく、こうした答えのない問いのようなものに触れられることが人間の醍醐味… とも感じているかもしれない。まぁ胸が苦しくなることに変わりはないんですけど!(←このレビューにおける初のびっくりマーク)