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ラブ・アクチュアリー 4Kデジタルリマスターのnetfilmsのレビュー・感想・評価

3.9
 たかだか20数年前の世界線を4Kにブラッシュ・アップしてもなぁと観る前は思ったが、それでもやはり最新のスクリーンで観れば相当キレイになっている。4Kとは何ぞや思う人はテレビの画質はHD画質。そして4KはHD画質に対して4倍の高解像度の画質を4Kと呼ぶと覚えてけば良い。時々元の画質は4Kだが、当館では2Kとなりますとあるのは、館に在る映写機が2K相当までしか対応していない為である。4K対応の映写機に買い替えれば4K視聴は可能だが、2KでもHD画質の2倍の情報量だから、ゼロ年代の映像でも数倍見栄えは良くなる。然しながら映像の色味よりも今作を観て唖然とさせられたのは、2003年のイギリス・ロンドンの活気である。映画はクリスマスまで5週間の日から徐々にクリスマスに近付いて行く過程を描いたグランド・ホテル形式の恋愛群像劇で、登場するキャラクターのほとんどがアッパーに浮かれている。アメリカ同時多発テロへの目配せも確かに在るが、それは起点と終点との綺麗な辻褄合わせでしかない。ハッピー・クリスマスと言うのはヨーロッパではハッピー・ニュー・イヤーとセットになる。12月後半と1月前半とはドラスティックに年月は過ぎるが、この頃のイギリスの活気を想えば、お通夜のような現在の世界に絶句する。

 思えば英国の90年代は、世界のヒュー様ことヒュー・グラントと、ブリット・ポップに明け暮れた時代だった。その中で『Mr.ビーン』のローワン・アトキンソンの世界的ヒットがあった。今作はその辺りの90年代に流行った大英帝国の大衆文化を、2003年に総ざらいしたいわば大英帝国の歴史が少しずつ流れ出す辺りが真に魅力的だった。『フォー・ウェディング』や『ノッティングヒルの恋人』や『ブリジット・ジョーンズの日記』などの脚本を書き、一躍時代の寵児に登り詰めたリチャード・カーティスはあろうことか自身のデビュー作に、ベテラン監督でも敬遠するようなグランド・ホテル形式の恋愛群像劇という無理難題に挑戦する。アンサンブル・プレイの妙を楽しむべき映画は何と10通りの恋愛群像劇がめくるめくようにモンタージュされる。一番有名なのは英国首相のデイヴィッド(ヒュー・グラント)と大統領秘書カレン(エマ・トンプソン)、傷心のベストセラー作家ジェイミー(コリン・ファース)と家政婦のオーレリア(ルシア・モニス)が挙げられるに違いない。リチャード・カーティスによる明らかに過剰な各登場人物の緻密な挿話が今作の中では見事に編集されているとは言い難いのだが、ここにはブリグジット以前の平和だったかつてのイギリスの活気が映し出されている。メリークリスマス。
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