びみょーでした。がっかり。
タイトルそのまんま"とあるベンチ"を通していろんな人たちの会話劇を楽しめるワンシチュエーション・オムニバス。やりたいことはジム・ジャームッシュかな。邦画であんまりこういう形式の作品は見られない気がするし、ほんとにキャストが豪華なのでどうなるか楽しみではあったのだが...。
第1章は幼馴染の広瀬すずと仲野太賀。台詞回しで気づいたけど『silent』『いちばん好きな花』で月9ドラマ界を席巻している生方美久脚本。この人の台詞回しはどうしても受け付けない。ながら見しても痒くなるくらいなので、スクリーンで強制的に見せられるとなるとマジできつい。広瀬すずと仲野太賀のお芝居が上手なのがより一層やかましくしてる。なんつーか、人が喋ってる感じがしないなあ。実際ドラマだとこの"自然体でお送りいたします"な塩梅が分かりやすくていいんだろうが、でっけえ画面で見るのはきつい。自然な会話にしては分かり易すぎる。それこそ『SUPER HAPPY FOREVER』の完璧なのを見たばかりから余計しんどい。単に自分が会話劇が苦手だけなのだろうか。ウディ・アレンくらい洗練されてないと受け付けないのか。いや、映画には映画の会話があるはずで、優れた脚本家ならばドラマと映画の会話の描き方の違いを理解して書いてくれるはずだ。クドカンもそこをしっかり弁えてる。今をときめくドラマ脚本家が映画のピッチでどこまで魅せるか期待してたのに、そのまんまドラマのノリを押し付けてくるのかと心底ガッカリ。
第2章は蓮見翔が満を持して映画脚本デビュー。岸井ゆきの×岡山天音(+荒川良々)とかいう贅沢な配置。ダウ90000は己のルサンチマンが邪魔して面白いと思ったことがないし、蓮見は好かんのだけど、今回は何度もゲラゲラ笑わされて参りました。他のパートも見た上で、やっぱり映画においてユーモアセンスって正義だなと、ほんとに。もはやコントだけど他と比べて段違いに面白かった。バイク乗らないのにバイクみたいな格好してる彼氏、そういう彼氏の小さな嫌な部分がちょっとずつ溜まってきて溢れそうな彼女。そんな二人のカオスな会話を盗み聞きしている荒川良々。この設定がいい。今後蓮見はなんなら映画方面で飛躍するかもしれないと思っちゃうぐらいには良かった。この人の台詞はたまに狙いに行きすぎて外すきらいがあるけど、そういうのもむしろ味かもしれない。いや〜面白いなあ。そしてやっぱり岸井ゆきのは良いですね...。
第3章はヒステリック今田美桜と森七菜の姉妹。もはやコメントしたくないくらいけど、お金払ってるからあえて言わせてほしい。低俗。こんなのスクリーンで見たくなかった。キャンキャンうるさい姉と理詰めの妹の不快な掛け合いを10分以上聞かせるなら聞かせるだけの転結のクオリティを要求したけど、ほんとに拍子抜け。女性の金切り声って不快ですよね〜ってのは脚本家の狙いだったのだろうけど、じゃあもっとちっちゃくやるかその不快さが盛大なフリになるくらいの巧妙なオチがほしい。
第4章は監督自ら書いてて、この作品のちょっとしたネタバラシ。一言、気を衒いすぎ。僕はそういうのでは笑わない。
なんか第5章もあった。で、この第5章に驚いた。最初の広瀬仲野ペアが出てきた。こんな感じで続々とさっきまでのキャラクターが出てきて現在の関係性をちょっとだけ提示して去っていくのかなと思いきや、なんと再び20分近くこの二人の会話を見せられてマジで具合悪くなった。何度も言うけど自然じゃない。脚本家の「こういうの喋らせときゃ自然体になるんだろうな」が透けすぎてて、結果として不自然。マジで会話に人間味を感じない。特に女性が想像する都合のいい男性って感じの仲野太賀がきつい。なんなんだよあの会話!ネタバレになるけど4章の草なぎ剛よりよっぽど宇宙人だよ!あまりに会話がウザいから途中でさっきの章で生命体だと発覚したベンチがどこかのタイミングで「きっしょいなあもう!」って広瀬仲野カップルをひっくり返してくれるかと期待したけど、全然そういうんじゃなかった。大体我々が客体となってベンチ上の会話を楽しむ映画なのになんでアンタらがベンチにエモーショナルを感じちゃってんだよ。なんか締めくくってて草。
まあ過去最高の蓮見脚本が見れたのが救い。
それ以外は...。これは会話劇に対してあるまじきイチャモンなんだけど、「語るなよ!」