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敵のfmのネタバレレビュー・内容・結末

(2025年製作の映画)
3.3

このレビューはネタバレを含みます

試写会にて鑑賞。
ルックの良い文芸映画。

主人公は文化資本の高い美老人であり、加齢による脳機能の低下からせん妄が生じている。
ありもしない「敵」に翻弄され、取り乱してはいるが、一般的な孤独死老人に比べれば、そこまで大崩れしているように見えない。
高い教養のおかげか、それとも背筋が伸びているからなのか、さほど憐憫を誘うような末路ではない。

役者の演技が全般冴えわたっていた。
先立って亡くなった妻、かつての教え子(なんという色気!)、そしてバーで出会ういただき女子大生。
それぞれの女優が魅力的で、翻弄される長塚京三の芝居も見事。
撮影も美しく、古風で格調高い日本家屋に不釣り合いなピカピカのiMacがツボ。

というわけで、吉田大八監督らしいハイレベルで重層的な作りではあるものの、桐島を観たときと同様、自分との接点のなさを感じて、それほど強くはハマらなかった。
陰謀論のキーワードが「北」なのは古いし、筒井康隆的なスラップスティック成分が足らないようにも思う(犬のフンを尻で踏んではいたが)。
作劇上仕方ないことだが、「なんだ、夢か…」の連発では緊張感が持続しない。
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