2ndアルバムあるある?
俺たちのインペイルド・レクタムが帰ってきた…!
というわけで、続編の今作は『HEAVIER TRIP』(原題)。更にヘヴィに、という言葉通り、前作の成功を受けて予算規模もアップしたのか、画面が明らかリッチに。いきなり壮大な空撮でドヤる素直さ。
刑務所でもバンドを続けるトゥロたちに、再びチャンスとピンチが訪れる。話のスケールもUPし、さくっと脱獄をキメた後は北欧を飛び出してドイツに向かったり、大物悪徳(風)プロデューサーとの戦いに身を投じたり。
前作のファン(わたし含む)からすれば、あのメンバーたちに再会できるだけでも嬉しい話で勝ち確。更に我が国からはBABYMETALが参戦し(しかも単なるゲストの枠を超えるくらいの活躍)、推しと推しが出会うミラクルを目撃することができる。
あと細かい往年のメタル/ロック関連の小ネタも増えて、隠れミッキー感覚で収集可能。メガデス、メタリカ、スレイヤー、モーターヘッド…大御所イジりが増えた様には、映画全体についた自信と箔を感じられ、なんか感慨深かったりもする。
と、今作単体で見れば十分楽しいし、変わらないノリに安心感もある…のだけれど、続編映画としては物足りなさがなくはない。「変わらなすぎる」のである。
スケールUPした、と書いたものの、実は行動や展開、それに彼らが直面する悩みすらも、大枠でいえば前作を再びなぞっていることに気づく。特に主人公トゥロは同じような過ちを繰り返していて、またそれに対する動機付けも描き込みと納得感が薄いため、単に前作の成長がナーフされてしまったかのような印象が残る。
前作と異なるのは、トゥロに限らずほかのメンバーにも克服すべき課題がセットされていることだろう。Gt.ロットヴォネンは演奏のスランプ(と実家のトラブル)、Ba.パシ(※1)はその頑固さ、Dr.オウラはパニック暴走癖、という感じ。
これらの設定と序盤の見せ方は素敵ながら、その収束と解決は本筋のストーリーとそこまで巧く絡まない。どちらかといえば個別に解決する向きが強いために、カタルシスは薄めなのだ。
また、村を出てしまったぶんローカルでローファイゆえのチープさを可愛げに変換してカバーできていた面は減じたともいえて、総合的、前作から新たにフレッシュな魅力を獲得しできたとは言いづらい。ちょうど直近の『モアナと伝説の海2』でも似たような感覚を覚えたけれど、要するに続編あるあるともいえるし、前作の資産を堅実に運用したともいえる。
そしてコレ、まさにバンドのキャリアでもあるあるではないだろうか。
インディーズで本人たちも予想外の成功を収めたあと、早々にメジャーにフックアップされて出した2ndアルバムが、まったく間違ってはないし良い曲が入っているはずなのだけれど何かどこか肩透かし…みたいな。劇中ではトゥロたちに目をつけてセルアウト(売れ線化)させようとするプロデューサーとのぶつかり合いが描かれるわけだけれど、映画自体もそのジレンマに足を取られた感があるのはちょっぴり皮肉だ。
文句を並べてしまったけれど、それもまた愛ゆえ…だと捉えてもらえたら幸いである。だって『3』も待ってたいんだもの。
しかし、メタル道に厳格すぎたパシも今作ですこし成長したのだから、わたしも見習うべきなのだろう。なんだかんだリズムを取ってしまってる爪先も、なんだがんだライブシーンで軽く緩んだ涙腺も、隠すべきではない。すてい・めたる。
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単純にもっと演奏シーンが観たい、てのはあるかも。3があるなら、ヨーロッパ中の刑務所慰問ツアー編とか希望。
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※1:今回、素顔のシーンは序盤も序盤のみで、その後はずっとフルメイクのクシュトラックスver。イケメンなのに良いのかそれで。すっかりマスコットとしての役割を全うしている。かわいいんだが?