してぃぼ

どうすればよかったか?のしてぃぼのレビュー・感想・評価

どうすればよかったか?(2024年製作の映画)
4.6
全ての結果が出てからあの時にああすれば良かった、あれは間違えてたなんていくらでも言える。その時々に最善の判断を下すのは本当に難しいこと。それが自分ではなく家族のことだとしたら尚更。

父と母が娘の異常性を認めずに、ずっと家の中に閉じ込めていたとも見える。だが、父と母にとっては、娘はとても頭の良い子だった。現に医学部にも合格している。自分の家に研究設備があって、家族で研究できる環境が整っていたのもあるから最悪人との関わりが少なくても問題ないと思っていたのかもしれない。

息子である監督がこの様子を30年間にわたって映像として残していたのが本当に想像するだけで痛ましい。最後の映像の父との対談シーン、よく撮れたなと思った。

娘は病気であるこを薄々気づいていたと父は言っていたけど、それでも病院に早く行けなかったのは理由がある。父と母はどんな状態になっても、最後まで娘が論文を書き上げる希望を捨てられなかったんだと思う。病気=悪と考えていて、何かしらの診断が下ることを恐れていたのかもしれない。娘は正常で、ただ勉強を頑張っている子だと信じたかったんだろうな。

狭い世界に閉じこもっていた経験が自分にもあるから少しだけ分かる気もする。河合塾の予備校と実家の往復。友人は受験に不要だと思って1人も作らなかった。ある日先生に授業中に当てられてた。声が出なかった。いろんな人と交流をしないと人っておかしくなってしまうんだとその時初めて思い知った。

「親が全て先回りして答えを出すのが1番良くないと思う」

本作はこの一言に尽きる。「母という呪縛 娘という牢獄」を思い出す。一方的な期待や歪な愛情はお互い苦しむだけだと改めて感じる。薬を飲んで一時良くなって、また下がってしまうのが病気の難しいところ。カメラに映った時のお茶目な姿。子供が打ち上げた花火を見上げる家族の姿。どれも忘れられない。
してぃぼ

してぃぼ