みかぽん

どうすればよかったか?のみかぽんのレビュー・感想・評価

どうすればよかったか?(2024年製作の映画)
3.9
ようやく常に満席状態が解消され、予約が取りやすくなった本話題作鑑賞に出かけてみた。

対象者が自分の家族の中に居なくても、例えば友達の弟や、噂で伝え聞く3軒先のご主人、同級生の退学理由は…と言った具合に、統合失調症は実の所、100人に1人の割合で発症する、割合的にみて喘息と同等のポピュラー疾患であったりするらしい。
だからなのか、あえて公の場で話題としなくても、精神疾患はそれぞれ個人が関心を持つテーマなのかな、と独りアタマを巡らせながらの鑑賞。
そして、こうした疾患はふた昔前には座敷牢、一昔前なら精神科でほぼ一生を過ごしていたであろう入院と言う名の隔離生活、あるいは治療効果がなければ医療者側の判断で行う「カッコーの巣の上で」のジャック・ニコルソンに見るロボトミー手術が浮かんだりもして、結果、そんな娘の不憫が高学歴成功者の両親には受け入れ難い現実だったのか、、とにかく事実を抱え込み、家の中に押し込んでしまったその決定が、結果として病気単体よりも不幸で取り返しがつかない日々へと向かわせる事となり、観る側の我々は終始、もし自分がこの家族の一員であったなら、をアタマに巡らせ続ける超重量級ドキュメンタリーだった。

後半、認知症を発症した母親が深夜、眠っている未治療のまま精神崩壊中の娘の部屋へ絡み込んで行くシーンは悲劇を超えた地獄模様だった。
更に驚くべきは、治療を否定させたまま精神破綻の状態に置かれているこの娘に学位を取らせ、その先の医師国家試験受験の暁には医師免許取得をと目論む両親の狂気、更に娘を留める最大の錨となっていた彼女の母親の不在でようやく治療が始まり、投薬が功を奏し発症前の娘が垣間見れらる状態となってもなお、娘への長きにわたる拘束と放置を問う彼女の弟に対し「後悔はない」と返す父親の言葉にも息を呑んでしまった。

今はもう、統合失調症であっても入院は必要最小限となり、薬が合い、通院と投薬とを継続していれば日常生活が当たり前に過ごせ、仕事や結婚だって出来ている、そんな人はおそらく世の中にごまんといるだろう。
早期発見で適切な治療が行えていればダメージも少なく、本監督のお姉さんは今とは違う別の人生を手に出来ていたのではないか。そう考えた時、お姉さん(マコちゃん)のピースサインの笑顔と片足上げのお茶目ポーズに失われた時間、やるせなさとを重ねてしまい、何というか、大変申し訳ないが私には親の責任について、彼女のご両親を強く糾弾したい気持ちで一杯になった…。
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