「EU FILM DAYS 2024」で鑑賞。ライターの月永理恵さんの解説あり。
刑務所帰りのミレーユはひとり実家に戻ってくる。荒れ果ててはいるが、ベルギーのナミュール、ムーズ川河畔に建っている大邸宅で、ここを維持する為に3人の男性に部屋を貸すことにする。
女優としても活躍しているヨランド•モロー監督の長編3作目である本作は、ちょっぴり不思議で、ベルギーが抱える移民問題や多様性の問題にまで触れた、ほっこりする物語だ。
人生に傷つき故郷に帰ってきたミレーユだが、ただ良い人っていうわけじゃなく、手癖が悪く大胆で肝がすわっていて、全ての人を受け入れる包容力があり、とてもチャーミング。
これは女優ヨランド•モローの魅力でしょう。
子供の頃から詩を愛するミレーユの自分の部屋の壁は何故か焼けこげていて、そこにはアルチュール•ランボーのデカい写真が貼ってある。
これはランボー好きにはめちゃくちゃ嬉しかった。
何かしら嘘の人生を送ってきたメンバーによる擬似家族が、霧に包まれたムーズ川を船でゆるゆると下っていくファンタジーのようなラストシーンは美しい。
一年半ほど前に、ナミュールから列車で30分ほど南にあるシタデル(城塞)で有名なディナンを訪れた。
列車はずっとムーズ川に沿って走り、窓から見える穏やかな川面は太陽の光にキラキラと煌めき、その向こうに広がる田園風景は、ため息が出るほど美しかった。