人生に迷った人間を見捨てない場所。
出だしから草彅剛が殴られまくるが、意気揚々とした音楽で、暗い映画だとは感じない。画面はセピアな色に包まれ、ホテルビーナスが良くも悪くも「薄い空間」である印象を受けた。
悪い意味での「薄さ」は、前半の、人々が何も生み出さない感じ。終盤まで、疲れた人間のわずかな余力を表すような、ゆっくりとした間で進んでいく。みんな何が正しいか分からないで、自分を好きにもなれない。チョナンが何もできない憤りでゴミ箱を蹴飛ばすシーンが、悩む人間のもがきとして象徴的だった。
良い意味での「薄さ」は、重いものを背負ってしまった人たちが、クズと呼ばれながらも、「抱えても、抱えきれなくても生きている」という、存在の権利を与えてくれる場所ということ。それ以外の義務は何も求めず、生きる義務を全うさせる包容力のある場所。
必ずどこかで命を繋ぐというアネモネの花のように、「希望を完全に放棄していないなら、必ず息を吹き返すことができる」という希望のメッセージを、複数人の復活のサイクルで描きながらも、盛り過ぎずに伝えくれている。