「午前十時の映画祭14」で面白かった順位:9/15
ストーリー:★★★★☆
キャラクター:★★★★☆
映像:★★★★☆
音楽:★★★☆☆
映画館で観たい:★★★★★
「午前十時の映画祭14」にて。
2001年のアメリカ・ドイツ・イギリス・アイルランド合作映画。
ロシア(ソ連)の有名な狙撃兵に焦点を当てた作品で、静かに、でも確実に敵を葬り去る狙撃戦がスリリングだった。
この映画の主人公は実在した狙撃兵のヴァシリ・ザイツェフ(ジュード・ロウ)。
実際の彼はウラル山脈で育ち、幼い頃より鹿の狩猟によって射撃技術を磨いた。
彼は狙撃によって257人の敵兵を射殺し、その功績を称えてソ連邦英雄、ヴォルゴグラード名誉市民などの称号も得たそう。
劇中の舞台はスターリングラード攻防戦。
その中で、ヴァシリは身を潜め、狙いを定め、敵を撃ち抜く日々を過ごしていた。
狙撃というのは敵に居場所を悟られることなく、確実に一発で仕留める正確性を求められる。
ゴルフのパター以上の集中力と緊張感、そして敵が射程圏内にうまく入るまで待ち続けるという忍耐も必要になるだろう。
観ているだけで息を呑むような空気に包まれる。
そんな状況を乗り越え、敵を次々と死に追いやるヴァシリの活躍は新聞の一面を飾り、広告塔としてもソ連軍の士気を高めるのに一躍買った。
ドイツ軍もそんなヴァシリを前に黙っているわけではなく、あちらはあちらでケーニッヒ少佐(エド・ハリス)という狙撃の達人を派遣する。
この人物、調べたところ実在したかどうかが怪しいらしい。
ドイツ軍には彼が在籍した記録がなく、ヴァシリを英雄として祭り上げるためにプロパガンダとしてソ連軍が捏造した可能性があるそうな。
とはいえ、独ソ両軍における凄腕スナイパー同士の戦いは手に汗握る見ごたえのあるシーンだった。
ラストはちょっとあっけなかったけど。
ケーニッヒ、なぜ不用意に姿を現したんだ。。。
あと、色恋沙汰の要素があるのも物語のいい緩急になる。
戦いの毎日に突如として訪れた癒し、ターニャ(レイチェル・ワイズ)。
まさに才色兼備の女性で、たちまちヴァシリは一目惚れ。
が、彼だけでなく相棒の政治将校ダニロフ(ジョセフ・ファインズ)も同じように一目惚れしていた。
いつ死ぬかもわからない状況におけるまさかの三角関係。
ターニャもヴァシリに夢中だったのでダニロフの入る余地はないのだけど、それでもあきらめないダニロフにはちょっと同情してしまう。
ダニロフの役割である政治将校というのは軍内におけるプロパガンダなどの政治指導を行う立場。
ヴァシリを新聞で取り上げるように取り計らったのもダニロフだけど、三角関係のもつれからちょっとヴァシリを悪く書くこともあったんだよね。
最終的には、この恋路に未来はないと悟ったダニロフはせめてもの償いとして、ケーニッヒの居場所をあぶり出すために犠牲になったのはなんか切なかったな。
そんなわけで、戦争映画とはいえ狙撃兵がメインなので、先日観た『プライベート・ライアン』(1998)より派手さはないものの(とはいえ、冒頭の戦闘シーンだけはかなりド派手)、緊張と忍耐を強いられる狙撃の静かな戦いはハラハラするものがあった。
あれは相当な集中力がないと務まらないだろうな。