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ペーパー・ムーンの盆栽のレビュー・感想・評価

ペーパー・ムーン(1973年製作の映画)
3.9
孤独が描く優しい軌跡


 レビュー2100本目に選んだのは、1973年の映画ながら全編モノクロという、ノスタルジックでありながら心温まるロードムービー。単なる詐欺師と孤児の珍道中を描いた物語に留まらず、人間の絆や生きる逞しさを鮮やかに描く名作。

 主人公モーゼを演じるライアン・オニールの軽妙な演技はもちろん、圧倒的な存在感を放つのは彼の娘であるテータム・オニール演じるアディです。幼さを超えた機知と勇気でモーゼに対等以上に渡り合い、接する。少女の見た目をした立派な女性です。アカデミー助演女優賞受賞という快挙を成し遂げたのも納得。

 詐欺を働きながら旅をする2人は、一見すると破天荒なコンビですが、旅を通じて生まれる絆の深まりは観客の心にじんわりと染み入ります。特に、アディがモーゼに見せる純粋な信頼と、それに応える彼の不器用ながらも真摯な姿勢は、この映画の核心にある「不完全な家族の愛」を象徴しているかのよう。全ての過程があるからこそ、ラストは良い締め方でした。

 絶妙な笑いと涙、そして人生の機微が凝縮された本作。時代背景やキャラクターの細部にまで配慮された演出が、物語の深みを一層際立たせています。生きることの本質を静かに問いかける、名作に相応しい一作でした。

2024.12.14 初鑑賞
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