この作品の前年、加山雄三は、黒澤明監督作品「赤ひげ」に出演。彼は保本登になりきり黒澤監督の下で映画とは何か、演技とは何か、人が生きるとは何かを手取り足取り教えられたはずだ。映画のラストはそれを強く感じた。
その後、彼はこんな作品に出ている。
まさに苦闘の時代だったはすだ。保本登を演じた以上。
1966年 「お嫁においで」
1967年 「乱れ雲」
1968年 「リオの若大将」
1968年 「兄貴の恋人」
1968年 「狙撃」
1969年 「フレッシュマン若大将」
1969年 「二人の恋人」
1970年 「豹は走った」
1971年 「誰のために愛するか」
1971年 「若大将対青大将」
若大将は相手役の星由里子が「リオ~」で最後になり、「フレッシュマン~」から酒井和歌子にチェンジ。と同時に大学生から社会人の設定になっている。
赤ひげ以降、これまでの若大将から脱皮し新たな加山雄三を模索し始める。
4つの路線。
・社会人の若大将
・内藤洋子などを迎えた新たな青春歌謡映画
・乱れ雲などの大人の恋愛映画
・これが脱皮の足掛かりだったと思われるシビアなアクション映画。
若大将も青春歌謡映画も71年で終了。加山雄三にとってこれまでの俳優としての路線の最後の時期だ。おそらく彼はこの時期相当に悩んだに違いない。
さて、この「お嫁においで」は先にレビューをあげた「兄貴の恋人」の逆バージョン。お嫁においでと言いながら、〇〇〇〇〇〇。
いいところのボンボン、一流社員。時々金持ちが鼻につくが、本人はいたって真面目。
好きになったのは例によって下町に住む貧しいレストランのウェイトレス。
二人の恋を邪魔するのは「家柄」だ。
初めっからこれではと思ってしまうような設定。
途中、例の若大将の名残で彼が歌を歌い出す。これがファンサービスとして当然のように入る。
「お嫁においで」「夜空を仰いで」「俺は海の子」だ。
妹役は内藤洋子。兄貴の恋人でも同じあだ名のデコ助役だ。他共演に有島一郎、飯田蝶子の若大将一家も顔を出して楽しい。笠智衆もおじいちゃん役で出演。
楽しい映画なのに「結婚」「恋愛」「お金」「家柄」で単純ストレートに悩む主人公露木昌子(沢井桂子)、彼女に恋する野呂高生(黒沢年男)の描き方が、仕方ないと思えるものの単純過ぎて時代を感じる。
脚本は松山善三。この人はこの頃までどうも思想的に偏っているのではないかと疑ってしまう。(これはあくまで私のイメージ)
監督はなんと本多猪四郎だ。