このレビューはネタバレを含みます
こんな簡単に人が殺されていいわけがない。
戦争は、人間を人間でなくす。シンドラーも、もともと正義漢だったわけではなく、商売としてユダヤ人をかくまっていた面も強かった。それでも彼の中で徐々に正義が大きくなっていく。それなら、皆が正義になることができるはずなのに、人間は恐怖に負けて非人道的な方に加担してしまうんだ。
ハンディカメラで撮影されている部分が多い。ドキュメントのようにこの物語を体験させられる気分。
モノクロに時折あるカラーが際立つ。火には温かさと明るさを感じるし、少女の赤い服には戦争に巻き込まれる命が“実在”することを強く感じた。
現在のパートで、生き残った人々とその子孫の姿を見て、人の強さも感じつつ、大量虐殺が現実に起こった出来事ということ、その過去を人類は背負っていかなければいけないことを感じて心が痛い。
最後の墓地のシーンで目に溜まった涙は、シンドラーへの悼みではない。シンドラーの勇敢さをほとんどの人間が持ち合わせていないことへの嘆き。