青乃雲

シンドラーのリストの青乃雲のレビュー・感想・評価

シンドラーのリスト(1993年製作の映画)
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スティーブン・スピルバーグが、この映画を撮った(もしくは撮らなければならなかった)理由も、観た側がこの映画から何かしらの感動を得ることも、どちらも良く分かるいっぽうで(という言い方こそが滑稽なほどに)、けれど僕の偽りのない直感は、そうした現象の総体について、言いようのない違和感を覚えてしまうところがある。

違和感というよりも、胡散臭さと言ったほうが近いかもしれない。そのためずいぶん長く、この映画について自分なりに書き記してみることができずにいた。今も、うまく記せそうにない。

もしかすると、この映画を絶賛する僕の周囲の人間が、シンドラー(リーアム・ニーソン)よりも、むしろSSの将校(レイフ・ファインズ)のように生きているのを、うんざりするほど見てきたからかもしれない。もしくは、シンドラー的なものを称賛することで、免罪符でも得ているかのように。

あるいは、ハンナ・アーレント(1906 - 1975年)が洞察した「悪の凡庸さ」の一面を物語ることで、もう一方の側面を、図らずも覆い隠したように見えたからかもしれない。

では、俺はどうなんだという問いについては、たぶん僕は毎分のように、自分自身にその切先を突きつけているところがある。その結果は、人生を終わってみなければ分からない。

分かったときには、おそらく僕にとって有意味な人間は誰もいなくなっている。
青乃雲

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