『007』9作目
ロジャー・ムーア主演2作目
イギリス秘密情報部にボンドの番号である007が刻まれた黄金の銃弾が届く。それは、素顔の知れない「黄金の銃を持つ男」の異名を持つ殺し屋・スカラマンガから007への暗殺予告である。自ら調査に乗り出したボンドは、太陽エネルギー開発の鍵となる「ソレックス・アジテイター」を巡り、スカラマンガのいる中国に乗り込み対決することになる物語。
今作の敵は、黄金銃と3つの乳首を持つ男・スカラマンガ。ボンドと互角の実力を誇る一流の殺し屋であり、世界征服や大金を稼ぐよりも007に死を与える事を望むという興味深いキャラ。スカラマンガの召使いである小人のニック・ナックが、召使いなのに彼の巨額の遺産を狙っているという不思議な関係性も良い。
ワルサーPPK VS 黄金銃の、男と男の一騎打ちは見どころ満載。スカラマンガの1ショット1キルの狙った獲物は逃がさない腕前は敵ながらカッコ良い。
万年筆、ライター、カフスボタン、シガレットケースを組み合わせて完成する「黄金銃」の仕掛けは男心をくすぐる。
今作のボンドガールは天然でヘマをする事が多いグッドナイト。ポンコツキャラなのに、バービー人形みたいな容姿で憎めないキャラなのが可愛らしい。
ボンドがスカラマンガに変装して潜入する際に乳首パッドを付けるシーンは笑った。
前作の『死ぬのは奴らだ』に引き続き登場したペッパー保安官が再登場したのも激アツ。おしゃべりで間抜けな彼がボンドの相棒として活躍するのも面白い。壊れた橋を飛び越える車の360°回転ジャンプアクションが新鮮で、更に着地したあとの2人が楽しそうなのも微笑ましい。
スカラマンガの館にあるトリックアートの怪しい部屋の内装がとても素敵だった。館の中で対決をする時のハラハラ感もたまらない。
シリアスさよりもコメディ要素満載のユーモアに溢れる作品。美術的な面でも目を引くような独創的な世界観が素晴らしかった。その反面、英国紳士であるボンドの紳士らしくない行動が目に付いた。空手の試合のお辞儀中に攻撃したり、木彫りの象を売る子どもを騙して川に突き落としたり、女性にまで手を挙げてしまうというクズっぷりが気になる。
ボンドが好きなドン・ペリニヨンは74年よりも72年の方が好みらしい。ビクトリア・ハーバーに放置された沈没した豪華客船クイーン・エリザベス号の残骸の当時の映像は興奮した。この作品のロケの後に解体されたらしい。
香港、マカオ、タイ、中国と東南アジアの国々が登場するが、なんちゃって感が否めない。香港で空手と相撲が登場するという意味不明な演出。アジア人に対する人種差別的な要素も少々あった。1970年代当時の時代を知るには良い作品だと思う。