海辺の別荘にやってきた主人公ポーリーヌが、従兄弟マリオンと二人のダメ男との恋愛をめぐるトラブルに巻き込まれ、芽生えかけていた彼女自身の初恋にすっかり水を差されてしまう。それぞれの恋愛観が対立しているけれど、自分の姿勢は譲らず相手に変化を求める恋愛関係がうまくいく筈もなく、それぞれなりに折り合いながら自分の居場所に帰っていく前向きなラストが清々しい。モテ男アンリのクズっぷりが目立つけれどそれについて悪びれる風はなく隠し立てもせず、唯一ついた卑怯な嘘(浮気相手のキャンディ売りと主人公の恋人候補シルヴァンの)についてもきちんと反省してクズなりにどこか憎めない愛嬌があって、マリオンにウジウジつきまとうピエールより確かにモテそうだわいと思う。とは言え寝ているポーリーヌにまでちょっかいを出しかけすぐに撃退されるのは痛快。また恋愛への建前と本音との違いに不安を生じ、アンリにしつこくして疎まれていくマリオンの女性像もとてもリアルである。この中でただ一人誠実さ故に傷ついてしまうポーリーヌの健気さ可愛らしさに魅了されずにはいられない。そして物語の起伏でなく瑞々しい会話によってドラマを語るロメールの作法は本作でも堪能できた。