モノクロフィルムに
満ち溢れる光と影。
そしてサイレント手法が
ノスタルジーの彼方へ
あなたを誘う…。
林海象第一回監督作品。
「夢みるように眠りたい」
先日濱マイク三部作を見て久々に林海象作品に触れ、コチラのデビュー作も観ておこうと。37年ぶりに見ました(笑)その時代で映画好きな方の中では林海象の存在はかなり注目されていて、その理由はこの作品。懐古主義的な作風と映画への深い愛を感じる点が映画ファンに受け入れられたんだと思います。
私立探偵魚塚の元に一本の電話が入る。攫われた娘桔梗を取り返してほしいと。名も名乗らず切れた電話に面食らう魚塚と助手の小林だが、依頼人が事務所に現れ、金の受け渡し場所を指定され、事件に乗り出す。だが…取引場所は暗号で解読をせねばならなかった…。
将軍塔の花、舞い散る星…、地球ゴマ、電気館…次々に出される暗号に導かれ、桔梗に近づく2人は…嘗て日本初の女優の未完に終わった映画へ導かれて行く…。モノクロフィルムによる光と影を活かした、幻想的ですらある大正から昭和初期をイメージさせる東京を舞台としており、まず、その美術、ロケーションが素晴らしい。濱マイクシリーズでも猥雑な古き良き横浜を作り出したが、林海象の舞台マジックはこの作品から。
更に…作品自体がなんとサイレント。字幕が大写しに(笑)ただ…台詞以外のいくつかの音や歌はトーキーに(笑)要は音が出るのでより印象に残る様になっている。
展開される古き良き探偵モノ、劇中劇で展開される剣劇ヒーローモノ、両者とも映画を支えてきたエンタメのジャンルであり、そちらでもノスタルジーを感じさせる。またそのシナリオはラストまで見ると映画への深い愛を感じさせるものだろう。
主演はこの作品がデビューの佐野史郎(まだ怪優になる前です)。ヒロインは佳村萠さん。幻想的な画面に映える美しいヒロインですね。この方、濱マイクのテーマを作曲されてるミュージシャンです。他吉田義男さん、松田春翠さんら戦前活躍の俳優さんを起用してます。やはり佐野史郎さんですかね…この頃から上手い…台詞なしでも十分伝わる(^^)
素晴らしい作品でクラシック好きな方にはオススメですが…注意点が1点だけ…サイレントですからね。滅多に音がしません。眠い時は見てはなりません。私…今回寝ました…m(_ _)m