レインウォッチャー

エクリプス トワイライト・サーガのレインウォッチャーのレビュー・感想・評価

3.0
かつて石仮面を手にしたディオ・ブランドーは「おれは人間をやめるぞ!ジョジョーーッ!!」と叫び、なんともご陽気な感じで人間をやめた。その決断、コミックスにして1巻分弱。

しかし、『トワイライト』ではそうもいかない。ベラ(K・スチュワート)が「私もヴァンパイアにしてほしい」と頼んでから映画3本も使ってなお、まだ人間はやめられないのである。

で、3本目の今作では基本的にずーーっとその話をしている。
前作のラストで愛するエドワード(R・パティンソン)が「ヴァンパイア化するなら結婚しよう」とプロポーズし、一応の折合いというか踏ん切りがついたのか、と思いきや、やはり120分たっぷりとあーでもないこーでもないとウジウジ悩み続ける。

というか、エドワードやジェイコブ(※1)を始めとして他のだいたいの登場人物が入れ代わり立ち代わりヴァンパイア化については「やめときなはれ」と同じ話を言い続けてる気がするのだけれど、ベラはなかなか譲らない。
なんだかその間に《ニューボーン》と呼ばれる若手吸血鬼軍団が攻めてきたり、1作目から因縁が続いていたヴィクトリア(※2)との決着がついたりしてた気もするのだけれど、既にしてあんまりよく覚えてないのが正直なところである。

ディオが人間をやめた目的は(「おれは人間を超越するッ!」とかはしゃいでいたように)《力》であり、方法は《自力》であった。
対して、ベラの目的は《愛》のためで、方法は《他力》。故にややこしいのだ。この対比には少年漫画と少女漫画の勘所の違い、引いては「男女そのもの」が抱えてきた生きづらさの違いがよく表れているともいえるだろう。

今作では高校の卒業と人間の卒業が重ねられていて(って書くとアホっぽいけれど)(いやアホなんだけれど)、級友ジェシカ(A・ケンドリック)のスピーチがベラの胸には響いているようである。「これからはたくさんの失敗を経て、本当の望みを確信できる」。

ただ、将来の進路と違ってヴァンパイア化は後戻りができないから、いまいち納得感に欠けるっつーか成立してないっつーか、オトコありきという他力に舵を委ねることを《選択》と呼んで良いのか?てのはベラに気付いてほしいところだ。

そして今作驚くことに、ラストはまた「結婚しよう」で終わるのである。なにこれデジャヴ?…じゃなかったぜ。まじかよ。どんな天丼だよ。まあ大事なことは何回言ってもいいよね、てことだろうか(たぶんちがう)。
要するに本質的には話が進んでいないようなもので、そのせいもあってか今回は観るのに分割で3日もかかってしまった…

ヴォルトゥーリ家の人も「ベラまだ人間やんけ」とか真っ当にツッコんでて笑ってしまう。そりゃそうだ。ダコタびっくりファニングだ。ディオくらいフッ軽なのも問題だけれど(実際その後敗けて灰になっちゃうし)、ベラ&エドワードの焦らしも大概である。
次こそ、ベラは人間をやめるのだろうか。だんだん「山ちゃんやめへんで」的な雰囲気すら感じてきてもいるのだけれど、大丈夫か。

>>To Be Continued...

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※1:ベラ、エドワード、ジェイコブの三角関係は前作から更に鋭角化、ていうか作り手は調子に乗ってきていると思われ、今作においてはほぼ悪ノリの域。ベラは引き続きアレだが、男性陣もパッパラパーだ。
あと、ジェイコブはやはり中盤以降ずっと上裸である。演じたT・ロートナーさんは風邪をひかなかったのだろうか。そんなことばかりが気がかりなのであった。

※2:ん?なんかやけにキレイになったな…?某YES!のクリニック?と思いきや、演者がB・D・ハワードねえさんに交代している。元のR・レフィブレさんは制作側と当時モメてしまったらしい。
しかしまあ、結果的には当たりだったとは思う。この頃のハワードねえさんは『スパイダーマン3』でグウェンを演じた後くらい、つまり最盛期ともいえ、まさに人間離れした輝きが眩しい。今回限りで退場なのが惜しい。