若干大江健三郎の不条理な初期短編みたいな雰囲気ではあるが、塚本晋也らしくダークでカオティックな映像世界に引き込まれる感じがあり見応えがある。一応、ラブロマンス。
『六月の蛇』のエロティックさやアンモラルさと比較しだいぶ大人しい文芸映画っぽくなった印象もあるが、作り手の独自性や情熱は確かに感じられる。男女の淡いロマンスや狂った時間構成などが如何にもインディーズ映画っぽく塚本らしい趣向。歌手のCoccoも素っ頓狂なダンスを踊りながら登場!
主演の浅野忠信は演技らしい演技をしてないのに凄いオーラがあり、ドヨヨ〜ンとした役者の掛け合わせを楽しめる素敵な悪夢?みたいな作品。『鉄男』や『バレット・バレエ』同様にアートとエンタメ性が共存した塚本ワールドの炸裂した一編。