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鏡の女たちのharunomaのレビュー・感想・評価

鏡の女たち(2002年製作の映画)
4.0
小津安二郎の反映画を著した吉田喜重の遺作。あまりにも完璧に遺作すぎるが、ユリイカやドライヤーの吸血鬼を想起する。ライティングは90年代の黒沢、青山っぽい。ビル内は当時の日本映画。不気味なもののフルショット、ロングショット、余白のフレーミング。感触としてはより良い、間口の広い諏訪敦彦。
反映画で小津派へ回帰したのはいいエピソードだが、だがアメリカ映画は?単に生き残った知識人としての晩年ならば、岡田茉莉子のエロスも三年後のエリ・エリで結実することにあいなった。その点でも最良の岡田茉莉子ではないのは、喜重の限界だと言える。笙(しょう)なり不協和音な音楽はシネマの助けになるのだろうか。
一律の人文学の領域から見れば、立派な映画だと思う、大学で上映すべし、いくつかの記憶にないほど古い記憶も呼び起こされるショットがある。
鏡の女たち、その反射は?
万田と20世紀、21世紀前半の日本映画への最善の回答とは言える。演出はこのように。ジョン・フォードではなく。
石破茂の保守本流は、軽薄な日本の妖怪を倒せるだろうか。
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